「我々のソリューションが成果を上げれば、特定の課題解決に特化したポイントソリューションが次々と登場するだろう」とグールは語る。実際、競合サービスは既に市場に現れ始めている。これらの企業はいずれも、18ヵ月前にYコンビネータがグールたちに助言したのと同じ発想に基づき、保険領域へ参入している。保険業界は巨大な市場でありながら、デジタル化が最も遅れている分野の一つだ。そこに今、人材不足や気候変動リスク、そして規制強化による構造変化の波が押し寄せている。
FurtherAIは、わずか半年前にシードラウンドを完了したばかりであり、資金調達のスピードが同社の成長の緊急性を物語っている。今回のラウンドにはアンドリーセン・ホロウィッツが参加し、シリーズAでの調達額としては、この分野で最大規模となった。グールは、競争環境の厳しさを認めている。「保険向けAI開発は、軍拡競争の様相を呈している。我々はライバルよりも6~8ヵ月先行しており、単一の課題解決にとどまらず、マルチワークフロープラットフォームとして差別化をさらに深めていく」と彼は語った。
今回のディールは、Yコンビネータとアンドリーセン・ホロウィッツによる全面的な支援の痕跡を色濃く示している。Yコンビネータは、グールとゴンダラを発掘し、保険業界への特化を助言するとともに初期資金を提供した。一方、アンドリーセンは資金提供に加え、信頼性の担保や取締役派遣といった支援を行った。もはやFurtherAIは小規模スタートアップの域を超え、完成度の高い事業体のようだ。例えるなら、Yコンビネータとアンドリーセンは、大手エージェント会社CAAとハリウッドスタジオの役割を担い、キャスト、アイデア、資源を組み合わせ、大作の制作を支えているかのようだ。
このエコシステムの重要性は大きい。アンドリーセンのパートナー、ジョー・シュミットは「創業メンバーは高度な技術力を備えており、顧客からは単なるAIツールではなく、真のAIパートナーとして認識されている」と評価する。グールは、ガートナーが提唱するハイプサイクル(新しい技術が社会に浸透し、成熟していくまでを可視化するフレームワーク)を引き合いに出し、現状を次のように説明する。「2023年には過剰な期待が膨らみ、精度の低さや幻覚による失望の谷を経験した。しかし、今は現実的な成長局面に入りつつある。重要なのはテクノロジー、リスク、そしてそれらを結びつける人間の存在だ」。
グールによれば、FurtherAIの売上高はすでに100万ドル(約1億5200万円)規模に達しているという。今回新たに調達した資金は、保険業界の専門家と連携した保険特化型ワークフローライブラリの拡充、保険会社やブローカーのシステムとの連携強化、さらには市場開拓チームの拡大に充てられる予定だ。
「私は過去10年間、自然言語処理とAIの分野に携わってきたが、ついに保険業界に実質的なインパクトをもたらせる段階に達し、非常に興奮している」とゴンダラは語る。「導入の加速に向けて、保険チームとAIエンジニアが密接に連携し、大規模な成果を生み出す現場密着型エンジニアリング体制を整えた」と彼は語った。


