ならばそれは、スパイがビットコイン誕生に関与したことを示唆するのではないか。ひょっとして米国家安全保障局(NSA)が長期戦を仕掛け、非公式な金融ネットワークを立ち上げていたのかもしれない。それは世界中の現場工作員に報酬を渡すため、あるいは敵対者が安心して取引する「ハニーポット」として機能し、NSA本部があるメリーランド州フォートミードにいる諜報員たちがその一挙一動を監視する──そんなシナリオも想定できるのだ。
それはまったく突飛な発想というわけではなかった。米海軍調査研究所は、ダークウェブを可能にした匿名化ソフトウェア「TOR」を生み出していた。FBIは後に、暗号化携帯電話とメッセージングサービス「ANOM」を秘密裏に開発したのだが、それらが知らず知らずのうちに組織犯罪者たちに採用された結果、800人以上の逮捕につながった。そして1996年の夏、NSAの情報セキュリティー調査技術局暗号部門の3人の研究者が、「いかにして大金を稼ぐか:匿名の電子キャッシュの暗号理論」と題する長文の論文を内部で発表し、後に公開された。
企業ぐるみの陰謀が背後に?
ナカモトという名前は、「SAmSung、TOSHIba、NAKAmichi、MOTOrola」といった大手テクノロジー企業の名前を組み合わせたものとしても読める。だとすれば、企業ぐるみの陰謀が背後にあるのかもしれない。ソーシャルメディアサイト「レディット」のユーザーたちは知恵を寄せ合い、暗号解読に挑んだ末に、「Satoshi Nakamoto」という名前が「Ma, I took NSA’s oath(母さん、俺はNSAの誓いを立てた)」や「So a man took a shit(つまり、ある男がクソをした)」などといったフレーズのアナグラムではないかという結論に至った。
人々はここで初めて、ナカモトがなぜ偽名を使ったのか、その理由を細かく吟味し始めた。有名人になることのわずらわしさからか? 政府が暗号技術者を追ってきた歴史を踏まえてのことか? いじめを避けたかったのか? 「ビットコインが生み出し得る敵」を警戒したのか? もしかすると、ただ匿名でいたかっただけかもしれない。あるいは、彼の他の事業とこの計画とを混同させたくなかったのかもしれない。
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