サトシ・ナカモト=「テクノロジー企業の名前」という疑惑はなぜ生まれたか

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しかし人々は、名を挙げずにはいられなかった。ナカモトは、デジタル通貨を予見した小説『クリプトノミコン』の著者ニール・スティーヴンスンなのか? ウィキリークス創設者のオーストラリア人、ジュリアン・アサンジか? それとも100万ドルの数学賞を辞退した引きこもりの天才、ロシア人グリゴリー・ペレルマンか?

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この騒動は杞憂(きゆう)に終わった。1月13日、ギャビンがナカモトからメールがあったことを伝え、コミュニティを安心させたのである。「厄介なバグについてのメールだった……彼はただ忙しいだけだ」。
しかし2011年4月16日、ウォバーというビットコイントークのユーザーが「彼がここに最後に投稿して以来、長い時間が過ぎた」として、新しいスレッド「サトシ・ナカモトとは誰か?」を立ち上げた。ウォバーは、ナカモトが多岐にわたる専門知識を持っていること、にもかかわらず奇妙な行動を取っていることを指摘した。これほど革新的なものを生み出しながら、一切の称賛も求めず、自らの地位を利用することもなく、何の予告もせず姿を消したのだ。

わざわざ偽の人格を作り上げる?

ある者はナカモトを、怪傑ゾロや、銀行や政府というゴリアテに石を放ったダビデになぞらえた。ナカモトがギャビン・アンドリーセンなのではないか、と疑う者もいた。ギャビンはオーストラリアに縁があり、同国で生まれ、幼少期に米国へと移住している。これなら米国式と英国式のつづりが混在するナカモトの表記癖にも説明がつくというわけだ。また別の人物は、ナカモトがわざわざ偽の人格を作り上げ、自分自身とやり取りするようなことまでするだろうかと疑問を呈した。

得られる手がかりが極めて少ない中、探偵たちは些細な部分にまでこだわらざるを得なかった。その名に手がかりが潜んでいるのではないか? 日本語で「サトシ・ナカモト(聡・中本)」とは、「中央情報部」を意味する可能性がある〔「聡」「中」「本」という漢字の意味から、このような解釈も可能ではないか、という説が生まれたことを示唆している〕。

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文=ベンジャミン・ウォレス 、訳=小林啓倫

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