ブロックチェーンを考案し、ビットコインを生み出した謎の天才サトシ・ナカモトの正体とは?
「ニューヨーク・タイムズ」のベストセラーを邦訳した『サトシ・ナカモトはだれだ?』(河出書房新社)から一部引用・再編集してお届けする。
1ビットコインの100分の1を「1サトシ」と呼ぶように
私がビットコインについて知った頃には、すでにコミュニティの若いメンバーたちが、ナカモトが何者なのかを問い始めていた。その憶測は彼が姿を消す前からあった。2011年1月までには、まだナカモトが蒸発する前だというのに、彼に対する崇拝が始まっていた。
ビットコインにもっと小さな単位が必要だということが明らかになると、コミュニティは1ビットコインの100分の1を「1サトシ」と呼ぶようになった(最終的には、1サトシは1ビットコインの100万分の1を意味するようになった)。
同じ月、誰かがナカモトが最後にビットコイントークに投稿したのは12月13日だということに気づき、騒ぎが起きた。ナカモトはプロジェクトを放棄したのか? 死んでしまったのか? 誰が我々を率いるのか? こうして初めて公然と、ナカモトの正体が議論され始めたのである。
誰かが、ナカモトは「ニコラ・ブルバキ」的存在ではないかと考えた。ニコラ・ブルバキとは、1930年代からこの名前を集団のペンネームとして、論文を発表していたフランス人数学者グループのことである。
別の人物は、この謎めいた存在がビットコインに有益な魅力を与えていると指摘した。また別の誰かは、「彼はただプライバシーを求めているだけだ。これは名声ではなく理想を追い求めているという明白な証拠であり、良いことだ。個人的見解だが、我々はそれを尊重し、彼の正体を放っておくべきだ」と主張した。



