経済・社会

2025.10.15 09:45

トランプにやられたらやり返す中国、それどころではない日本

実際、トランプ氏は12日には自身のSNSでの投稿で「米国は中国を助けたいのであって、傷つけたいわけではない」とやや軌道修正を図った。ベッセント財務長官も月末には予定通り、韓国でトランプ氏と習近平中国国家主席による首脳会談が開かれるという見通しを示している。李氏は「トランプ氏の行動を予想するのはあまり意味がありませんが、双方が先端半導体技術とレアアースの規制をそれぞれ緩和することで落ち着くのではないでしょうか。場合によっては、中国が善意を示して大豆の追加輸入を約束するということもあるかもしれません」と話す。

一方、米中関税戦争の余波は日本にも及ぶ。トランプ政権の高関税政策は世界のGDPを2年間で0.5%程度押し下げると試算されている。米中関係が険悪になれば、日本の安全保障環境も緊張することになる。ただ、日本は次期政権の枠組みが固まらず、今月31日から11月1日まで韓国で開かれるアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議に誰が出席するのか見通しが立っていない。期待されているトランプ氏や習近平氏との会談もどうなるのかわからない。

李氏は「(中国にとって日本の)与党と太いパイプがあることは極めて重要で、公明党の連立離脱は中国にとっても想定外で望ましくないはずです。一部の公明党の連立離脱の裏に中国がいるという陰謀論は的外れです」と語る。その上で、「全く仮の話」として、「さまざまなシナリオが考えられる中、野党の大連立政権になって、公明党の斉藤鉄夫代表が首相に就くというのが、日中関係の安定という意味で中国にとって最もうれしい展開でしょう」と語る。

李氏はこうした仮定の話をした理由として「日本の一部には、中国の戦略性を過大に評価し、常に裏があるように思う人がいるようです。そうすると、中国評価する人物や政策は、日本にとって国益を損なのだということになるわけです」と指摘する。そのうえで、「中国の指導者たちも同じ人間で、感情もあります。日本と戦争をしたいと考えているわけではありませんし、お互いに仲良くすることに越したことはないはずです。中国の指導者はよくウィンウィンという表現を使いますが、それは本音だと思います」と語る。

トランプ政権の登場で日米同盟が揺らいでいるのも事実だ。中国にむやみに譲歩したり追従したりすることは許されないが、中国と是々非々で付き合える力量は、次期首相に求められる条件の一つと言えるだろう。

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文=牧野愛博

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