米シリコンバレーのLilac Solutions(ライラック・ソリューションズ)は、従来の採掘よりも安価で、環境負荷が小さく、水の使用量も少ない方法で電池用リチウムを取り出す技術を持つ。同社が目をつけたのは、ユタ州のグレートソルト湖だ。
トランプ政権がネバダ州で進む大規模鉱山開発に出資したことで、米国は今後数年で、電池用リチウムの主要供給国になる可能性がある。しかしLilacは、従来型の採掘に伴う高コストや環境破壊を回避するための、より優れた方法があると考えている。同社は、地中を掘り起こす代わりに、油田やグレートソルト湖のような場所にある塩水から高価な鉱物リチウムを抽出しようとしている。
約380億円を調達し初の商業用処理施設、2028年に年間5000トンの生産を目指す
オークランドに拠点を置くLilacは、約10年前の2016年創業以来、リチウム抽出のための特許取得済みイオン交換技術を磨いてきた。現在、同社は2億5000万ドル(約380億円。1ドル=152円換算)を調達して、グレートソルト湖に初の商業用処理施設を建設し、2028年までに年間5000トンのリチウムを生産する計画を進めている。CEOのレイフ・サリーによれば、この試みは、ほんの始まりにすぎないという。同社は今後、全米各地の油田やガス田の地下に眠る巨大な塩水層──テキサスからフロリダにかけて広がる太古の海の名残「スマッコーバー層」など──からリチウムを取り出すためにエネルギー企業をサポートしていく計画だ。
「塩水から得られるリチウムの量は、通常の鉱山の場合と比べ桁違いに多い」とサリーはフォーブスに語った。
アーカンソー州のスマッコーバー層に最大1900万トン、米国の輸入分以上の潜在量
スタンダード・リチウム、エクソンモービル、シェブロンなどの企業がスマッコーバー地域で進める塩水プロジェクトは、年間数十万トン規模のリチウムを生産できると見込まれている。米国地質調査所(USGS)は昨年の調査で、アーカンソー州のスマッコーバー層だけでも最大1900万トンのリチウムが存在する可能性があると推定した。調査を主導したUSGSの水文学者キャサリン・クニアリムは、「この地域の溶解リチウム量は、米国のリチウム輸入分をまかなって余りある」と述べている。



