家畜化は、イヌの社会的能力の形成に寄与した
近年の研究により、長い歴史にわたるヒトとイヌの伴侶関係が示唆してきたことが裏づけられている――イヌは、ヒトに対する特別な感受性を備えているのだ。ヒトの手で育てられたイヌとオオカミの子を比較した研究において、イヌは生後数週間の時点ですでに、ヒトの注意を引こうとする傾向を示した。
イヌは、オオカミと比べて頻繁にヒトとアイコンタクトをとり、ヒトの身振りを正しく理解した。一方、オオカミはイヌとまったく同じようにヒトと接して育っても、独立心旺盛なままだった。
興味深いことに、記憶や問題解決といった非社会的課題では、イヌとオオカミの成績は同程度だった。この結果は、イヌが家畜化のなかで一般知能を増大させたわけではなく、社会性や協力といった個別の能力を向上させてきたことを示している。
この知見はさらに、イヌとヒトの比類なき絆には深い生物学的ルーツがあり、数万年にわたる進化を通じて、社会的注意や協力といった能力が優遇されてきたことを物語っている。
イヌとオオカミは共通祖先をもつにもかかわらず、イヌとヒトの社会的絆は、オオカミとヒトの関係とは好対照をなす。学術誌『Animal Cognition』に2025年に掲載された論文では、ヒトの手で育てられたイヌとオオカミを比較している。この論文の趣旨は、イヌとオオカミがヒトに対して自己主張する方法に興味深い違いがあるというものだ。
ヒトとの相互作用の際、オオカミは概して、用心深く耳を正面に向ける姿勢を取ったのに対し、イヌはより幅広い感情表現を示した。具体的には、例えば耳の向きによって、迷いや服従を示すことが多かった。加えて、イヌはより頻繁に尾を振り、ヒトを注視し、ヒトに近寄ろうとする行動を見せた。
この研究のもう一つの重要な知見は、ヒトもまた両者に対して異なる反応を示したことだ。研究協力者は、オオカミよりもイヌに対して、より頻繁に、よりポジティブな顔の表情を示した。ここから、私たちヒト自身のバイアスが、イヌとオオカミの行動の違いをさらに増幅させている可能性が示唆される。
こうして取り上げてきた知見は、ヒトと動物の関係がいかに複雑なものであるかを裏づけている。イヌは驚くべき社会的柔軟さを示すが、この能力は、家畜化という進化の産物であると同時に、ヒトとの相互作用において影響を与え合ってきた結果でもあるのだ。
我々がイヌと結ぶ唯一無二のつながりは、数万年にわたる共進化と伴侶関係を雄弁に語っている。


