アラブ首長国連邦に拠点を置くテクノロジーホールディンググループ「G42」と英国の世界的な未来予測コンサルタンシー「The Future Laboratory」が8月、共同で発表した最新レポート「The Future of Sport and AI 2025」は、この変革の最前線を克明に描き出している。本レポートでは、スポーツ業界のシニアエグゼクティブ300名を対象としたグローバル調査と、各分野の第一人者への詳細なインタビューを敢行。そこから浮かび上がってきた「AIとスポーツの未来予想」は、楽観的な期待に溢れているものの、同時に見過ごすことのできない「戦略的ギャップ」が読み取れる深刻な警告でもある。
ここでは、本レポートを紐解き、いつの間にか日常生活に浸透した「AI」が、スポーツ産業に与える真のインパクトを、ビジネスリーダーの視点から分析。あらゆる業界が直面する未来の縮図を、スポーツに焦点を当て詳らかにしたい。(この記事は後編。前編はこちらから)
スポーツAIの最前線を読み解く5つのキーストーン
先進的な組織はAIをいったいどのように活用し、価値創造しているのか。レポートはAIとのコラボを「戦略と新奇性探究」「才能の発掘」「エンゲージメントの変化」「スポーツ科学の進化」「ライフデザイン」という5つのキーストーンを持って、具体的なトレンドを分析している。
・戦略に必要な新奇性探究気質
AIを戦術に取り入れる上で最大の障壁は、技術的な問題ではない。「変化への抵抗」であると35%のリーダーが回答している。この文化的障壁を乗り越える鍵は、データリテラシー以上に「好奇心」だと専門家は口を揃える。 NFLテネシー・タイタンズのフットボール研究開発ディレクター、サラ・ベイリー氏は「最高の協力者は、必ずしもデータにもっとも精通しているわけではない。ただもっとも好奇心旺盛なだけだ」と指摘。



