ニューヨークおよびロンドンに拠点を置くスポートロジー・グループのクリス・ブレイディ博士も、過去から現代に至る偉大な監督たちに共通する特性として「強烈な好奇心」を挙げる。現状に満足せず、常に新しいアプローチを模索する……そうした探究心を持つ者にとってAIは最高の相手となる。これは「好奇心」ではなく、むしろ「新奇性探究(Novelty Seeking)気質」と呼ぶべきだろう。新奇性探究気質こそが、AIによる戦略設定に必要とされる。日本人はこの新奇性探究気質に欠ける傾向があるとさえ囁かれる。脳科学者の中野信子氏も講演で「日本人はわずか1%しか持ち合わせていない」と言及。北欧人は14%で新大陸へと渡ったアメリカ人などは、さらに高いとしている。
実はこんな日本人の気質がAI開発の、またはAI活用の遅れに影響しているのかもしれない。AIに対する、まずは新奇性探究、そして戦略の構築は、AI時代に不可欠と読み取れよう。
・才能の発掘
AIスカウトから「ゴースト・アスリート」まで AIは才能発掘のあり方も変革をもたらしている。フィットネスアプリのデータを解析し、アマチュアの中から「ダイヤモンドの原石」を発見する「 AIスカウト」の概念は、もはやサイエンスフィクションではない 。アナログ社が開発したAIコーチ「ANA」は、エリート選手のトレーニングデータを学習、一般ユーザーのデータと比較することで、隠れた才能を見つけ出し、スカウトへとつなげる可能性を秘めている。トレーニング手法も進化中だ。VR技術を駆使した没入型トレーニングは、戦術理解や意思決定能力を高めるために既に活用されている。日本でも共同通信デジタルなどが手掛けている。今後はスマートグラスと連携し、仮想環境での学びを現実のピッチ上でリアルタイムの支援も可能となる時代がやって来る。
そして、もっと革新的で、同時に倫理的な議論を呼ぶのが「 ゴースト・アスリート」の概念。これは、ディープフェイク技術とデジタルツインを融合させ、アスリート本人そっくりのAIレプリカを生成し、マーケティング活動やファンとの交流に活用するというもの。これにより、アスリートは競技に集中しながら、新たな収益源さえ確保できる。特に、競技成績だけでは十分な収入を得られない多くのアスリートにとって、これはキャリアを支える生命線となり得る。そのためには肖像権を保護し、悪用を防ぐ法整備も不可欠ではある。


