筆者が訪ねたもう1軒は、同じく福建省三明市沙県発のご当地グルメのフランチャイズ店「沙県小食」だった。この系列の店は高田馬場など東京にもある。
過当競争のさなかの中国カラオケ居酒屋
筆者の見立てでは、ガチ中華のオーナーになる人間には2つのタイプがあるようだ。東京や大阪などの中国籍の人たちの多い大都市圏に出店する人たちが多数派だが、その一方、少数派として、大都市での過当競争を避けて地方都市でのんびり家族経営をするような人たちがいる。
後者の場合、地元の日本人客を相手にするほかないので、筆者が「私鉄沿線系」と呼んだオーナーたちのように、日本人の口に合わせたガチ度の低い中華料理を供している。
こうした少数派の人たちもコロナ禍で苦戦した。特に関西以西の地方にいた中国系のオーナーたちは、商機を求めて、この西成に来たのだと思われる。彼女たちの身の上話を聞くかぎり、万博景気を見込んだことや大阪華商会の「中華街構想」の影響もあっただろう。
もっとも、現状をみるかぎり、西成でも中国カラオケ居酒屋は過当競争のさなかにある。商店街を歩くとわかるが、客の多い店と少ない店が歴然としているのだ。これだけ中国カラオケ居酒屋が増えれば、かえって同胞相手のデリバリー需要に応える飲食店のほうが儲かりそうにも見える。
近年、西成についてメディアで盛んに報じられているのは、民泊物件の急増だろう。筆者も、多くの若い外国人旅行者がこの通りを抜け、周辺の古い家屋の跡地に次々と建設されている民泊施設に宿泊している光景を目にした。
経済が低迷する中国から逃れてくるチャイナマネーに依存した民泊ビジネスと、華僑による伝統的な飲食ビジネスの流れを引き継ぐ中国カラオケ居酒屋があふれているのが、今日のこの地の姿である。大阪・関西万博も終わり、大阪の特区民泊のルール変更も報じられるなか、これからどう変わっていくのだろうか。


