西成の中国カラオケ居酒屋の客層
次に訪ねた店は、2023年12月に中国人経営者らの親睦団体「大阪華商会」が建てた関帝廟の近くにある店で、福建省出身の女性が切り盛りしていた。
実は、この中国の廟を建てた大阪華商会の会長は、西成で中国カラオケ居酒屋を最初に始めた草分け的人物で、福建省出身の不動産会社社長の林伝竜さんだった。
前述のAIの回答によれば「2010年代以降の中国資本算入とカラオケ居酒屋の台頭」とする内容とともに、同会が2019年、商店街に中華料理店を増やすなどとする「中華街構想」を発表するに至った経緯について、次のように説明していた。
<2010年頃を境に、動物園前商店街の空き店舗に中国資本による買収が顕著になりました。大阪市西成区が日雇い労働者の街「あいりん地区」に隣接し、不動産価格が比較的安価であったためです。
中国の人々にとってカラオケ居酒屋の開業は、手っ取り早く始められるビジネスの1つでした。このビジネスモデルの萌芽は、1996年に来日し、西成で日雇い労働者として働いていた林伝竜氏が、景気後退後にラーメン屋から居酒屋に転換し、カラオケを導入したことに見出せます。
その後、カラオケ居酒屋の数は増加し、2010年頃に約30軒だったものが、2022年には150軒にまで達したというデータもあります。その背景には、中国系の地場不動産が空き物件を中国人に貸し出し、そのほとんどがカラオケ居酒屋を開業するという連鎖的な流れがあるとされています>
さらに、こうした「連鎖的な流れ」は「移民コミュニティ内部で自己完結型の経済エコシステムが形成されたことを示している」とAIは説明している。
筆者にとってこのAIの指摘が面白かったのは、一般に東京のガチ中華では客層の多くが中国系の人たちであるという意味で、同様に「自己完結型の経済エコシステム」が形成されていると言えるのだが、西成の中国カラオケの客層の大半は地元大阪の日本の人たちであることだ。「自己完結型」ともいえないのである。
実際、福建省出身の女性のカラオケ店には、日本人の常連客もいて、メニューも日本人向けのものだった。
だが、関帝廟の周辺には、何軒かの福建料理を出す店が見つかった。翌日、筆者は独りでその界隈を歩いて、2軒の福建料理店を訪ねた。最初の1軒は「鳳味居」という名のこぢんまりとした食堂で、中国語のメニューには「福清料理」とあった。
この「福清」というのは福建省福州市の一地域名で、以前もこのコラムで書いたように、特定の地域から家族や親族、同郷の人たちを、先に海外に渡った華僑が呼び寄せる「チェーン・マイグレーション(連鎖移民)」の日本に向けた2大送出地の1つなのである。


