そこには同商店街の「中華カラオケ店の歴史的な変遷」として「2010年代以降の中国資本算入とカラオケ居酒屋の台頭」「地域社会への影響と初期の課題」「中国人コミュニティの形成と文化的な側面」「現在の状況と今後の展望」といった背景情報に加え、「本格中華料理が楽しめるおすすめカラオケ店」のリストを挙げていた。
もっとも、そこで挙げられていた5軒のおすすめ店に関して、AIはネット上の口コミや店舗情報から「中華料理」を提供していると明記されている店舗を選んでいるものの、「具体的なメニュー内容、料理の専門性、味の深堀りに関する詳細なレビューが限定的であるため、その判断には限界がある」と正直に述べていたのである。
つまり、AIは西成におけるガチ中華のありかについて回答できなかったわけなのだ。ということは、そのような情報を口コミとして残すカラオケ客がほぼいなかったということだろう。そのため、われわれは自らの足で「ガチ中華」を供する店を探し歩くほかなかった。
とはいえ、安藤さんはこれまでもこの界隈に何度か足を運んでいて、すぐに「当たり」を付けてくれた。彼が「ここはそうじゃないか」と案内してくれた最初の店は、外観や雰囲気は他の同業店と変わらないが、ガチ中華を確かに提供していたのである。
その店はカラオケ店にはよくある奥に延びた長いカウンター越しに客と向き合うつくりで、同じカウンターに店主の息子の小学生くらいの男の子がいて、母親が仕切る仕事場で学校の宿題をやっていた。いかにもガチ中華らしい世界である。
その店のメニューは2種類あった。1つは日本人向けのよくあるカラオケ用のつまみメニューで、もう1つは日本語で書かれていたが、「ジャガイモの黒酢炒め」「羊肉のスパイス炒め」「中華風ネギ餅」「麻辣香鍋」といったガチ中華だった。
ちなみに「ジャガイモの黒酢炒め」は「炒土豆絲(チャオトウドウスー)」という千切りにしたジャガイモを黒酢で炒めたもので、「羊肉のスパイス炒め」は「孜然羊肉(ズーランヤンロー)」という羊肉のクミン炒め、「中華風ネギ餅」は「葱油餅(ツォンヨウビン)」というネギ入りパイのことだ。
これを見て、筆者はこの女性は中国の北方出身だと推測し、それを訊ねると、彼女は河南省出身だと答えた。なんでも2000年代に来日して、岡山県の某都市で中国家庭料理の店を営んでいたが、6年前に大阪の西成に移住してきたのだという。


