欧州

2025.10.15 08:00

ウクライナ軍の女性兵士が男性優位のロシア軍を翻弄 ピンク色の無人機で

ウクライナ軍の女性兵士。2023年7月15日撮影(Ercin Erturk/Anadolu Agency via Getty Images)

ウクライナ軍の女性兵士。2023年7月15日撮影(Ercin Erturk/Anadolu Agency via Getty Images)

ウクライナの無人機(ドローン)メーカー、ワイルドホーネッツは先月末、特殊仕様の迎撃無人機「スティング」を納入した。標準的な迎撃無人機との唯一の違いは、女性指揮官と女性操縦士から成る部隊のためにピンク色に塗られていることだ。

ウクライナ軍では女性兵士の存在感が増している。ロシアとの戦争は文化戦争でもあり、ウクライナ軍の女性兵士たちは男性が支配的なロシア軍が抱く最大の恐怖を利用している。

女性兵士を積極的に募集し始めたウクライナ軍

ウクライナ軍に勤務する女性は約7万人に過ぎず、そのうち戦闘地域に配置されている女性兵士はわずか5500人しかいない。著名な女性兵士もいるが、依然として根強い性差別が残っていると指摘する声もある。

ウクライナ軍は比較的最近になってソビエト体制から脱却した組織で、上級将校の多くはソビエト時代の残党と見なされている。2018年の調査によると、ウクライナ人の53%が軍隊における男女平等を支持していることが明らかになった。ロシアがウクライナへの全面侵攻を開始した後の2023年3月になると、この割合は80%に上昇した。

ウクライナのメディアは、ボランティアの防空部隊「ブチャの魔女たち」のような女性のみで構成される部隊を称賛している。これは軽対空兵器でロシア軍のイラン製無人機「シャヘド」を撃墜する任務を負う機動射撃班の1つだ。攻撃は通常夜間に行われるため、「ブチャの魔女たち」の女性兵士は日中には教師や医師、ネイリストといった職業に就いている。女性兵士らは積極的な役割を担うことで、毎晩続く無人機攻撃による無力感を克服できると語っている。

無人機を操縦する女性兵士も存在する。ウクライナ無人システム部隊は4月、一人称視点(FPV)無人機と爆撃無人機を装備した女性部隊「ハーピーズ」の募集を開始した。同部隊は男性を排除するものではないが、「最後の一撃を加える操縦士の役割は女性のみが遂行する」と宣言している。ウクライナ国家警備隊の第13特務部隊「ハルチヤ」も5月、初めて女性の採用を目的とした募集を開始した。

これにより、女性無人機操縦士の採用促進が期待されている。ウクライナ軍で活躍する女性兵士の存在は、ロシア軍の男性兵士を挑発するのにもうってつけだ。ロシア軍は性別役割に関して旧態依然とした考えに固執し、強さや頑強さに加え、暴力的ないじめが伝統とされる女人禁制的な環境を育んでいる。こうした環境にあるロシア軍の男性兵士にとって、女性兵士から攻撃されることは、男らしさを傷つけるものと見なされる可能性が高い。

ウクライナ軍の伝説となった女性兵士

無人機を操縦する女性兵士の中には、既に伝説的存在となっている者もいる。女性無人機操縦士のカテリーナ・トロヤン(32)は6月、ロシア軍の砲撃で死亡した。トロヤンは1000回以上の任務を経験した著名なFPV操縦士で、青く染めた髪が目印だった。

一方、コードネーム「ユンハ」で知られる女性兵士(19)はウクライナ紙RBCの取材に対し、当初は女性であるためまともに扱われなかったが、現在は状況が変わっていると語った。「真の訓練は戦場で始まる。その場で決断する術を身につける。これはコンピューターゲームではない。ここはいつ何が起きてもおかしくない場所だ。その覚悟をしておかねばならない」

ユンハはFPVの操縦技術と集中力、注意力と冷静さによって数多くのロシア兵を死に追いやってきた。「装備や砲兵などの巨大で重厚な目標を破壊することは、戦略的には確かに価値が高いと理解している。とはいえ、正直なところ、歩兵を恐怖に陥れ、消していく方が満足感が大きい」

このメッセージはロシア軍に向けたものかもしれない。しかし、軍隊にいる女性を真剣に扱うべきではないと考える者にとって、これは挑戦でもある。ユンハは典型的な兵士には見えないかもしれないが、戦績がすべてを物語っている。

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翻訳・編集=安藤清香

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