宇宙

2025.10.26 16:00

NASA「火星に生命の痕跡の可能性」説に新たな疑問、著名地質天文学者が指摘

NASA火星探査車パーシビアランスが撮影した数十億年前の河川跡「ブライトエンジェル地域」の360度パノラマ画像の一部。この地域に、古代の微生物の痕跡が含まれている可能性があるとされるサンプルを採取した岩石「チェヤバフォールズ」がある。画像右下隅に探査車の影が写っている(NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS)

NASA火星探査車パーシビアランスが撮影した数十億年前の河川跡「ブライトエンジェル地域」の360度パノラマ画像の一部。この地域に、古代の微生物の痕跡が含まれている可能性があるとされるサンプルを採取した岩石「チェヤバフォールズ」がある。画像右下隅に探査車の影が写っている(NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS)

米航空宇宙局(NASA)の火星探査車パーシビアランスがジェゼロクレーターにある岩石にバイオシグネチャー(生命存在指標)の可能性のある特徴が含まれているのを発見したとする同局の最近の研究発表は、著名な地質天文学者のスティーブン・モイジシュが異を唱えたことにより、少々打ちのめされた感じになっている。おそらくモイジシュの名前を最も広く知らしめたのは、火星起源の隕石「アランヒルズ」に古代の微化石の痕跡と思われるものが含まれているとする1996年のNASAの発表に水を差したことだろう。

現在はドイツ・バイロイト大学バイエルン地質研究所に所属するモイジシュは、学術誌Natureで先月発表されたパーシビアランスの「バイオシグネチャーの可能性」仮説に異議を突き付けている。

モイジシュは取材に応じた電子メールで、今回の研究で明らかになった化学的特徴に関してはすべて、生命が存在しない状況で起こり得る反応によって説明がつくと述べている。今回の分析で検出された有機物、リン酸塩鉱物、硫化鉱物はすべて隕石中で見つかっていると、モイジシュは続けている。モイジシュは今回の研究結果をまとめたNature論文の査読者の1人ではない。

類似する非生物学的な化学反応が、火星の岩石中で起きた可能性があるのではないかと、モイジシュは考えている。

常に専門的に慎重な検討を行っているものの、モイジシュが早い段階で(1984年に南極大陸で発見された)アランヒルズ84001隕石の発表に対して示した反応は未来を予見していたと、より広範な惑星科学界から見なされている。

実際に、アランヒルズ隕石の微化石をめぐるNASAの主張は現在、大きく疑問視されている。主張の根拠は隕石の内部にバクテリアの微化石に似た形態のものがあるというだけであり、南極か火星で非生物学的なプロセスによって生じたものとするのがより可能性の高い説明だと、地質学者の大半が指摘しているのだ。

火星由来の隕石ALH84001の顕微鏡画像(NASA)
火星由来の隕石ALH84001の顕微鏡画像(NASA)

サンプル探索

しかし、それだからといって、いかなる形であれ古代の生命の痕跡が見つかる見込みの高いと思われる火星の領域で、パーシビアランスが今なお主要な任務を遂行中で、サンプルを収集し続けていることに、希望を持たない方がいいというわけではない。

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翻訳=河原稔

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