宇宙

2025.10.26 16:00

NASA「火星に生命の痕跡の可能性」説に新たな疑問、著名地質天文学者が指摘

NASA火星探査車パーシビアランスが撮影した数十億年前の河川跡「ブライトエンジェル地域」の360度パノラマ画像の一部。この地域に、古代の微生物の痕跡が含まれている可能性があるとされるサンプルを採取した岩石「チェヤバフォールズ」がある。画像右下隅に探査車の影が写っている(NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS)

今回のような泥岩が形成された当時のジェゼロクレーターに広まっていたことが判明している条件を考えると、古代の泥岩の化学的な副産物が非生物的に生成される可能性は低いと思われると、NASAは主張している。

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NASAによると、生物学的な反応なしで、これらの副産物を生成する方法は、持続的な高温や酸性条件、有機化合物による結合などを含めていくつか存在する。だが、ブライトエンジェル層の岩石は高温や酸性条件に晒された形跡はなく、そこに存在する有機化合物が低温での反応を促進できたかどうかは不明だと、NASAは報告している。

それでも、モイジシュは再び異を唱える。同様の鉱物が見つかっている炭素質隕石の中でも、微生物が有機物を摂取し、鉄の錆や硫酸塩を呼吸していたのだろうかと、モイジシュは問いかける。そうではないと自分は考えていると、モイジシュは続けた。

火星で調査活動中のNASA探査車パーシビアランスを描いた想像図(NASA-JPL/Caltech)
火星で調査活動中のNASA探査車パーシビアランスを描いた想像図(NASA-JPL/Caltech)

火星のバイオシグネチャーを見つけるための探索で、NASAに欠けているものは何だろうか。

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地球でどのように生命が始まったかに関する確固たる知識が欠けていると、モイジシュは指摘する。最初期の最も原始的な生命が実際にどのようなものだったかがまるでわかっていなければ、「バイオシグネチャー」に関する議論は実在しない根拠に基づくものとなると、モイジシュは説明する。

Nature誌に掲載された今回の論文の筆頭執筆者は、異なる見方を示している。

Nature論文の筆頭執筆者で、米ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校に所属するパーシビアランス担当サイエンティストのジョエル・ヒューロウィッツは取材に応じた電子メールで、論文執筆者らは今回の研究結果を評価するプロセスの次の段階として、査読を経た科学文献でのさらなる議論を期待し歓迎すると述べている。

結論

火星で生命が誕生したことを示す有力な証拠は、まだ何も目にしたことはないと、モイジシュは話している。

forbes.com 原文

翻訳=河原稔

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