NASAの最近の発表は、約35億年前には確かに生命生存可能だったと思われるジェゼロクレーターの一領域に関するものだ。パーシビアランスは、この領域で現在進行中の探査とサンプル収集活動の間に、ブライトエンジェル岩石層からコアサンプルを採取した。
この岩石層は実際に、古代の河川峡谷の縁にある一連の岩石露頭で、ジェゼロクレーターに勢いよく流入する水によって切り出されたと考えられると、NASAは指摘している。この領域を探査中にパーシビアランスが採取したサンプルの1つは「サファイアキャニオン」と命名された。
現在は探査車内部の密閉されたチューブ内に格納されているサファイアキャニオンは、将来に実施されると研究者らが期待している後継のサンプルリターンミッションを通じて、地球に持ち帰られる機会が訪れるのを待っている。
興味深い鉱物
Nature誌に掲載された論文によると、今回の研究では、ブライトエンジェル層にある有機炭素を含む泥岩に0.1mm大のノジュール(団塊)とmm大の反応前線が含まれており、これらはそれぞれリン酸第一鉄鉱物と硫化鉱物に富む藍鉄鉱(ビビアナイト)とグリグ鉱(グレイガイト)である可能性が高いことが明らかになった。
NASAによると、藍鉄鉱は地球の堆積物や泥炭地、腐敗している有機物の周囲などに頻繁に見られる。同様に、グリグ鉱は地球に生息する特定の種類の微生物によって生成される場合があるという。
堆積物と有機物との電子移動反応によって形成されたと思われるこれらの鉱物の組み合わせは、成長のためのエネルギーを生成するためにこの反応を利用する微生物の痕跡である可能性があると、NASAは主張している。
だが、バイオシグネチャー(生命存在指標)が、ジェゼロクレーターにあるこれらの鉱物の最も優れた説明なのだろうか。
モイジシュによると、藍鉄鉱は興味深いリン酸塩鉱物だが、「生体鉱物(バイオミネラル、生物が作り出した鉱物)」と謳われているものの1つではない。1890年にウクライナで発見されたアウグスティノフカ(Augustinovka)隕石は、藍鉄鉱が地球外環境もしくは天体衝突に関連する環境で形成される可能性があることを示しているという。また、グリグ鉱も炭素質隕石などの隕石中で見つかっていると、モイジシュは続けた。


