サイエンス

2025.10.14 09:00

2025年ノーベル賞、米国人6人受賞も半数は移民──科学は世界を平等にする偉大な力

2025年10月8日、スウェーデン・ストックホルムにて行われた2025年ノーベル化学賞の発表。受賞者は(左から)京都大学の北川進、豪メルボルン大学のリチャード・ロブソン、米カリフォルニア大学バークレー校のオマー・M・ヤギー(Atila Altuntas /Anadolu via Getty Images)

2025年10月8日、スウェーデン・ストックホルムにて行われた2025年ノーベル化学賞の発表。受賞者は(左から)京都大学の北川進、豪メルボルン大学のリチャード・ロブソン、米カリフォルニア大学バークレー校のオマー・M・ヤギー(Atila Altuntas /Anadolu via Getty Images)

2025年のノーベル賞科学部門では、米国人6人が受賞の栄誉に輝いた。しかし、うち3人は移民であり、しかも1人は10代の頃に英語もままならない状態で米国にやってきた、難民のルーツを持つ人物だ。

このように移民が米国の科学技術分野の発展に貢献する実例が示される一方で、トランプ政権は、高度な技能を有していようが例外なく移民を制限する新政策を提案・施行している。留学生ビザ(査証)の有効期間を最長4年間とする措置や、米国企業が外国人技術者の受け入れに使ってきた就労ビザ「H-1B」の制限などだ。H-1Bビザは高度な技能を持つ外国人が米国で働く唯一の実用的な手段だが、トランプ政権はビザ申請の手数料を10万ドル(約1480万円)に引き上げ、さらに新たな規制強化方針も打ち出した。

今回のノーベル賞発表は米国人に、同胞の功績について学ぶ機会を提供したといえる。

ノーベル賞に彩られた米国移民の歴史

20世紀初頭から科学分野では移民たちが卓越した能力を発揮してきた。特にここ25年間の米国移民の功績はめざましい。米国政策財団(NFAP)の分析によれば「2000年以降、米国人が受賞したノーベル化学賞、医学賞、物理学賞の4割が移民に授与されている」という。

今年のノーベル化学賞受賞者で唯一の米国人であるオマー・M・ヤギーも、ノーベル物理学賞を受賞した米国人3人のうち2人も、移民である。フランス生まれのミシェル・H・デヴォレと英国生まれのジョン・クラークは、米国生まれのジョン・M・マルティニスと共に「電気回路における巨視的な量子力学的トンネル効果とエネルギー量子化の発見」によりノーベル物理学賞を受賞した。

ノーベル物理学賞委員会は「コンピューターのマイクロチップに搭載されているトランジスタは、私たちの身の回りに存在する確立された量子技術の一例だ。今年のノーベル物理学賞は、量子暗号、量子コンピューター、量子センサーなど、次世代の量子技術を開発する機会を提供した」と評価している。

デヴォレはイェール大学名誉教授でカリフォルニア大学サンタバーバラ校の教授、クラークはカリフォルニア大学バークレー校の名誉教授で、2人とも学生の指導という形でも米科学界に貢献していると教育関係者は指摘する。

次ページ > ノーベル賞創設以来、科学部門の米国人受賞者の36%が移民

翻訳・編集=荻原藤緒

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事