中間管理職の隠れた戦略的レバレッジ
中間管理職は、独自の戦略的レバレッジも握っている。中間管理職には、大局とこまごました現実の両方が見えるため、上級幹部が見落としがちな知見を得ることができるのだ。現れつつあるリスクを早期に発見して非公式なネットワークを理解し、チームが戦略の変化をどう解釈しているかを感じることができる。
こうした立ち位置にいる中間管理職は、組織の変化を強力に加速する存在になり得るが、逆に変化を遮る存在にもなり得る。組織の変化に関するジョン・コッターの研究では、変革が成功するのは、複数の階層をまたぐかたちで十分な数の人が一致団結したときであることが判明している。そうした団結の接点となるのが、中間管理職だ。中間管理職の賛同がなければ、変革の取り組みは行き詰まる。そして賛同があれば、急速かつ連鎖的に広がる。
しかし多くの組織は、この潜在的な力を活用できていない。戦略はたいてい幹部のあいだで決められ、決定済みの計画として受け渡されたものを中間管理職が遂行する。こうした在り方では、中間管理職の知見が蚊帳の外に置かれてしまう。彼らの主体的に取り組む意欲が低下し、彼らからの支持も弱まる。
戦略策定の早い段階で中間管理職を引き入れれば、彼らのレバレッジを解き放つことができる。想定の厳密な検証や、最前線における反応の予想を中間管理職に依頼し、導入計画を共同で設計すれば、戦略とコミットメントが強化される。計画のなかに自分の足跡があれば、中間管理職はその計画を支持するだろう。
もう一つの有益なやり方は、中間管理職のあいだで横のネットワークをつくることだ。知見を共有したり、対応を調整したりする部署横断的なフォーラムがあれば、縦割りを崩し、業務遂行を加速できる。そうしたネットワークでは、たいていの場合、既存の報告チェーンよりも速く情報を伝えられる。
中間管理職を戦略的資産として位置づける
組織が起こすべき最大の変化は、文化面での変化だ。中間管理職を通過点と見るのをやめ、目的地の一つとして見る必要がある。中間管理職は、将来上級幹部になるための一時的な待機場所ではない。組織構造を支える背骨なのだ。
中間管理職の地位を復権するには、投資が必要だ。これはつまり、中間管理職に特化した職能開発プログラムを構築し、そうしたプログラムでは技術的なスキルだけでなく、システム思考、影響力、文化の主導に重点を置くことを意味する。
さらに、中間管理職を単なるキャリア上の通過点と位置付けるのではなく、この役職レベルでの卓越性を重視する明確なキャリアパスを提供するということでもある。
また、パフォーマンスを測定する方法を変える必要もある。中間管理職を、チームのアウトプットだけをもとに査定するのではなく、能力の構築、有能な人材の保持、部署をまたいだコラボレーションの強化という点で評価することができる。こうした方法は、単一の報告サイクルを越えてパフォーマンスを維持する手段になる。
個々のリーダーにとって変化の手はじめは、中間管理層についてどのような発言をするか、ということだ。中間管理職を管理上のパイプ役として見るのではなく、戦略的なパートナーとして評価することで、組織全体における期待の在り方が変わるだろう。
現在「見過ごされている存在」である中間管理職を、最強のエンジンとして認識する組織こそが、未来を手に入れる。組織の方向を定めるのは上級幹部かもしれないが、実際にそこへ到達できるかを左右するのは、中間管理職なのだ。


