ウクライナ侵攻で国外脱出を選択する国民も
プーチン大統領がウクライナ侵攻を開始した際、戦争に反対する一部の国民は国外脱出を決断した。こうした人たちは主に隣国のジョージアやカザフスタンなど、ロシア系住民やロシア語話者が多数居住する国々に移住した。中には、欧州連合(EU)加盟国や東南アジア、南米諸国に渡った移民もいる。特に2022年9月にロシア政府が動員を発表した際には、国民の国外流出が加速した。
米スタンフォード大学は、ウクライナ侵攻開始以降、約100万人のロシア人が国外に流出したと推定している。ロシア人移住者のほとんどが高等教育を受けた若年成人だ。これが、ロシア国内で現在生じている労働力不足の一因となっている。
米シラキュース大学のブライアン・テイラー教授は筆者の取材に対し、「前線で数十万人もの兵士が不必要に命を落とし、ロシアの最も優秀で有能な若者の一部が国外へ流出するなど、プーチン大統領によるウクライナ侵攻は国の将来に甚大な損害を与えている」と語った。
戦死、国外脱出、少子高齢化の三重苦にあえぐロシアの人口動態
ウクライナ侵攻に伴う死亡や国民の国外流出に加え、ロシアでは人口の自然減少も起きている。CEIPが9月に発表した報告書によると、ロシアでは出生率が低下していることに加え、男性の死亡率が上昇している。さらに、ロシアでは65歳以上の国民が総人口の18%以上を占めており、かつてないほど高齢化が進んでいる。つまり、高齢化の進度が若い世代の増加の速度を上回っているのだ。これにより、年金制度と医療制度への負担が増している。同報告書は、ロシアの社会保障制度が崩壊する可能性を指摘した。
CEIPは、ウクライナ侵攻開始以降、家族支援に充てられた予算がロシアの国内総生産(GDP)の1%にも満たないと推定している。他方で、スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の推計によれば、ロシア政府は2025年に国防費を増額し、GDPの7.2%を充てた。
経済的な不確実性が出生率をさらに低下させ、人口減少に拍車をかけている。ウクライナ侵攻前の2021年に公表された国勢調査によると、ロシアの人口は1億4700万人だった。国連人口基金は現在のロシアの人口を1億4400万人と推定しており、同国の人口がわずか4年間で300万人減少したことが示された。
この減少ペースは鈍化しておらず、国連はロシアの人口減少が今後も続くと予測している。国連が提示した最悪のシナリオでは、ロシアの人口は2100年までに5700万人にまで減少する可能性がある。これは、わずか一生涯で人口が半減することを意味する。ロシア政府が人口減少を食い止めるためにどのような仕組みを導入するのか、今後も注意深く見守っていきたい。


