経営・戦略

2025.10.14 12:00

スピード優先・期限厳守は企業では大損失につながることも、過去8例を知る

Fokusiert / Getty Images

スケジュールに固執し開港10年後ろ倒し

ドイツのベルリン・ブランデンブルク国際空港は開港予定日が10年近くずれ込んだことで世界的な話題となった。当初の開港目標は2011年だったが、火災安全システムと技術上の不備により延期を重ねることとなった。28億ユーロ(約4900億円。1ユーロ=176円換算)と見積もられていた費用は65億ユーロ(約1.1兆円)超へと倍増した。皮肉なことに、初期の開港目標を守ろうと急いだ結果、数年遅らせることになった。システム統合に関する懸念を無視し、とにかく前進させることで上層部はプロジェクトをはるかに金のかかるものにした。懸念に対処するためにペースを落とすことを厭わない文化があれば、プロジェクトはもっと少ない費用でここまで恥をかかずに完了できたはずだ。

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時間節約策が裏目に

F-35統合打撃戦闘機計画ではコンカレンシー(同時進行)と呼ばれる戦略で時間を節約しようとした。この戦略では生産と試験が重なっていた。問題が見つかっている間にも機体が生産されたため、何百機もの機体に改修が必要になった。コストは数千億ドル(数十兆円)に膨れ上がった。この戦略は計画を迅速に進める方法に見えたが、史上最も費用のかかる軍事プロジェクトの1つとなった。ロッキードはそのリソースを技術革新や他の計画に投資できていたはずだ。同時進行が賢明かどうかを問うことを奨励する文化があれば、当初は計画の進行を緩めたかもしれないが、計画全体では莫大な金を節約できたかもしれない。

完成急ぎ工期も費用も大幅超過

シドニー・オペラハウスは世界で最も有名な建築物の1つだが、完成までの紆余曲折は期限がいかに裏目に出ることがあるかを思い起こさせるものでもある。当初の予算は700万豪ドル(約7億円。1豪ドル=100円換算)で1963年の完成予定だったが、完成したのは1973年で、費用は1億豪ドル(約100億円)以上に膨れ上がった。スコープの変更と決定を急いだことが再設計と手直しにつながった。この建物は今でこそ賞賛されているが、納税者にとっては大きな機会損失だった。もしトップが設計変更やエンジニアリングの問題、長期計画にもっと探求心を抱いていれば、このプロジェクトは大きな機会損失の例となる代わりに、効率を備えたバランスのとれた美しさを示すものとなっていただろう。

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翻訳=溝口慈子

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