トリガー2:驚き
驚きもまた強力な記憶の引き金だ。脳は予期せぬことが起こると注意を払うようにできている。おそらく多くのコメディアンがこのようなことをしているのを見たことがあるだろう。コメディアンのジム・ガフィガンはそれが得意だ。ガフィガンの著書『Food:A Love Story(フード:ラブストーリー)』の中にステーキハウスへの愛と、ステーキハウスに埋葬されるという病的な妄想についてのくだりがある。そこでガフィガンは、ステーキハウスへの心からの愛を綴っており、自分の棺がステーキハウスのダイニングルームに安置されるのが死に際の願いだと語っている。そして以下の文章が続く。
常連客:「なぜ部屋の真ん中に棺があるの?」
ウェイター:「あぁ、それはコメディアンのジム・ガフィガンです。彼の唯一の願いは……」
常連客:(話を遮る)「リブアイステーキとベイクドポテトにします。ブルーチーズを添えてもらえますか?」
ウェイター:「すぐにお持ちします、ガフィガン夫人」
展開の荒唐無稽さと、妻を常連客にするというひねりが読み手を驚かせる。予想外の展開がこのジョークを印象的で面白いものにしている。
驚きは好奇心をくすぐる
教室でも研修でも、あるいは会議でも、ちょっとした工夫で驚きを盛り込むことができる。長い概要で始めるのではなく、予想を裏切る統計から始めるのだ。例えば、安全手順を強化しなければ、従業員の最大80%が1週間以内にそれを忘れてしまうという調査結果がある。このような事実に人は目を覚ます。驚きはまた、直感に反する話や挑発的な質問、あるいは人が知っていると思っていたことを変えるような素早いデモンストレーションによってもたらされることもある。
タイトルに説得力があり、予想とは異なる内容のTEDトークがよくあるのはそのためだ。例えば、心理学者レオン・ヴィントシャイトの講演『Want To Be Successful? Try Being Stupid(成功したい?馬鹿になってみて)』や発明家シモーヌ・ジアーツの『Why You Should Make Useless Things(役に立たないものを作るべき理由)』など。私自身の講演の1つに『When Success Becomes The Enemy(成功が敵になるとき)』がある。
驚きは好奇心をくすぐる。何かが予想に反したとき、その理由を尋ねるのは自然な反応だ。沸き起こるその好奇心が人々を夢中にさせ、次に何が起こるかに注意を向けるよう脳を刺激する。


