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2025.10.12 12:00

プレゼンに生かしたい、あなたの言葉を忘れられなくする「脳のトリガー」3つ

RichVintage / Getty Images

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私の中学時代の英語教師は、前置詞を教えることに並々ならぬ情熱を注いでいた。当時、文の終わりに前置詞を持ってきてはいけないと注意されていた。そうしたことから、その教師は生徒に前置詞を置くところをはっきり教えようとした。教師は生徒に箱を想像させた。箱の中(in)、箱の表面(on)、箱の上(over)に何かがあるとすれば、そうした言葉が前置詞だと説明した。さらに、より視覚的にするために、教師は生徒に箱から何かが飛び出す「びっくり箱」を想像させ、ちょっとした驚きを加えた。単純明快で、記憶に残るものだった。数十年経った今でも、on、over、outといった単語で文章を終えるのを躊躇してしまうのは、あの箱のことが頭に浮かぶからだ。

今思えば、3つの脳のトリガーを利用したからあの説明はうまくいったのだ。教師のテーマに対する情熱が感動を与え、思いがけないイメージが驚きを生み、シンプルさゆえに私の生徒にも説明しやすい。あのときの授業が今日でも鮮明なのはこれらの要素による。同じような手法が指導者や教師、トレーナーがプログラムを開発する際にも役立つ。チームに安全規則を覚えさせる、生徒に新しい科目を理解させる、会議でアイデアを発表するなど、目標が何であれ、人は情報を聞くだけでなく、記憶する必要がある。脳科学は、こうした脳のトリガーがなぜ機能するかを説明するのに役立つ。

トリガー1:感情

人は感情を伴う瞬間を記憶する。笑いや恐怖、ちょっとした戸惑いを生むような話はメモした後でもずっと記憶に残る。これは神経科学的に説明できる。感情を処理する扁桃体は記憶を司る海馬と相互に作用する。脳は感情的な体験を重要なものとしてタグ付けし、それを長く保持する。

情報は感情と結びついたときに定着する

指導者や教育者にとって、これはデータや論理だけでは十分ではないということだ。情報は感情と結びついたときに定着する。朗報なのは、このために劇的な物語を語る必要はないということだ。個人的に苦労したことや研修の最中のユーモア、あるいは人々が実際に気にかけていることにつながるケーススタディは、すべて脳の感情的コネクターを活性化できる。好奇心も大きな役割を果たす。不思議に思うという行為そのものが注意を高める感情状態を作り出す。人は好奇心を抱くとドーパミンがわずかに増え、答えを求めるようになるだけでなく、学んだことの記憶も強化される。

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翻訳=溝口慈子

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