「戦時中の緊縮策」という危うい手
ロシアの戦争機構も財政の限界にぶつかっている。ロシアの2026年の軍事予算はおよそ13兆ルーブル(約24兆円)と、今年の13兆5000億ルーブル(約25兆円)から減る見通しとなっている。ロシアの軍事予算が減少するのは2022年にウクライナに対する全面侵攻を開始してから初めてだ。ウクライナの国営通信社ウクルインフォルムによると、ロシアの51の連邦プログラムのうち18で予算が削減され、2070億ルーブル(約3800億円)あまりが節約されることになる。繰り返せば、ロシアは同時に、ウクライナによる製油所へのドローン攻撃の影響で、軍人への支払いやその他の戦費で依存する石油収入自体も損なわれている。
公共交通機関も歳出削減の犠牲になっている。ロシアのバスやトロリーバス、トラムの半数近くが耐用年数を超えているにもかかわらず、2026年には新車両の購入向け支出が3分の1に削減される予定となっている。社会で必要とされているものへの支出が、戦費のために切り詰められていることを示す一例だ。
ウクライナの独立系分析プラットフォーム「VoxUkraine」の編集者で経済学者のイロナ・ソロフブは「ロシアは原油を主に中国とインドに輸出できる限り、輸出収入は減少はしても完全に枯渇することはないでしょう」と筆者のインタビューで語った。
それでもロシア国内では燃料価格の上昇が経済全体に波及し、消費財も軍需品も同様に価格を押し上げている。「このためロシア中央銀行は金利を引き上げざるを得なくなり、銀行部門に負担が生じ、融資のコストが上がります」とソロフブは続けた。ウクライナ指導部が製油所に対する攻撃を、ロシアの戦争機構を弱体化させる最も効果的な手段のひとつと見なしている理由も、まさにこうした経済的圧力を与えられる点にある。
欧州政策分析センター(CEPA)のシニアフェロー、アレグザンダー・コリャンドルは論考にこう書いている。「経済成長が停滞し、歳入が減少しているロシアは、これまで戦時の拡張を支えてきた財政刺激策をもはや打ち出すことができず、代わりに民間経済をさらに締めつけるおそれのある緊縮策を取らざるを得なくなっている」


