ロシアによるウクライナでの戦争は持久力の過酷な試練となっており、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は戦時財政を維持するのに苦慮している。ロシアが短期間で勝利を収めるという予測の多かった戦争は、甚大な損害を伴う消耗戦に陥り、ロシアはウクライナが築き上げつつある「ドローン(無人機)の壁」を突破できずにいる。
ロシア中央銀行はこれまで、どうにか自国経済の崩壊を防いできた。とはいえ、恒常的な戦時体制は民間部門を疲弊させている。莫大な戦争関連支出の必要性とインフレを抑え込む闘いのため、政策金利は依然として17%という高水準にあり、企業活動を圧迫しているのだ。
そうしたなかで、ウクライナはロシアの製油所を麻痺させる精密打撃作戦を展開している。また、ドローンや国産ミサイルの生産を加速するとともに、自律型兵器の役割を拡大させている。クレムリンに山積する問題は、ウクライナのこうしたイノベーション(技術革新)によってますます深刻になっている。
ウクライナ軍の先端技術採用を支援している団体「Dignitas Ukraine」のリュバ・シポビッチ最高経営責任者(CEO)は、そうしたイノベーションのひとつであるAI(人工知能)による目標照準システムについて、前線から遠く離れた地点でとくに効果的だと筆者に説明した。「前線近くの場合、敵と味方を混同してしまうリスクが高くなりますが、前線の後方深くではその心配がありません」
クレムリンは戦争を継続するために、石油・天然ガス収入を主な財源に軍人の給与や死傷者の家族への補償金を支払ってきた。だが、こうしたやり方では、現在の戦争努力を支えきれなくなるかもしれない。
「ソ連は4年でドイツを打ち破りました。ロシアは4年かけてもドネツク州の半分しか奪えていません」。ウクライナ陸軍第92独立強襲旅団の迫撃砲部隊指揮官であるアナトリー・トカチェンコは筆者にそう話した。こうした状況に対するロシアの答えは、さらに資金を費やすことだ。クレムリンは石油収入を軍人への給与に充て、戦争努力のために兵力を供給し続けている。



