博士(PhD)課程では、学生を訓練する際に、適切な問いを投げかけ、推論については常に根拠を問いただし、問題に対する新たなアプローチを編み出すよう心がける。AI(人工知能)の普及により、経営学修士(MBA)課程で学ぶ者にも、こうしたスキルが必要になる可能性が出てきた。
コロンビア大学のビジネススクールで新学期が間近に迫るなか、筆者は3週間かけて、プレゼンテーションのスライドを更新した(筆者は、同校で会計学の教授を務めている)。
これは、筆者が担当している、「投資家、企業幹部、起業家向けファンダメンタル分析(FAIME:Fundamental Analysis for Investors, Managers and Entrepreneurs)」の授業で用いるものだ。
この講座では、1学期を費やして、1つあるいは2つの企業の360度分析を行なう。今学期は分析対象として、Home Depot(ホームデポ)とStarbucks(スターバックス)を選んだ。
今回、スライドの更新には、普段と比べてかなり多くの時間がかかった。だが、これは何も、ホームデポとスターバックスの経営状況が複雑怪奇で、理解が難しかったからではない。学部長からの後押しもあり、講義内容の作成に、全面的にAIを取り入れようとしたからだ。AIによって節約できた時間と成果物の質を検証し、AIが生産性を向上させる効果について測定しようと考えてのことだ。
ChatGPT(GPT-5)とGemini(この2つ以外のAIツールは試していない)で今まで以上に多くの時間を費やすなかで思い起こされたのは、筆者が博士課程在籍中に学んだ、以下の4つのスキルのことだった。
1. すべての推論について、エビデンスを根拠とするよう努める
2. 推論の根拠は何なのか、常に問いかける
3. 適切な質問をする術を身につける。通常、答えは問いほど重要ではない
4. 博士課程の学生に対し、あらゆる事柄について「君が新たに加えられる価値は何か?」と問いかける
では、GPT-5を活用しながら講義ノートを作成した体験に関して、これらのテーマを織り交ぜて語っていこう。



