キャリア・教育

2025.10.13 13:00

AI時代のビジネスには、博士課程の基本スキルが必要だ──常に仮説と検証を繰り返す

Photo illustration by Li Hongbo/VCG via Getty Images

4. 将来の「知的財産(IP)」は、AIへのプロンプトや問いかけ

このいくぶん明白な点は、博士課程との類推を説明するのに役立つ。我々教官は、博士課程の学生を教える際に、「適切な質問を投げかけるスキル」を養うことに集中する。問いが正しければ、回答は自然についてくるものだ。

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AIから適切な答えを引き出すには、「質問」スキルが必要に

AIの登場によって、問いと答えのプロセスは、ビジネス版『ジェパディ!』の様相を呈している。つまり、解答者が質問形式で答えを言う、このクイズ番組と同様の状況だということだ。

あなたは、答えがわかっているとしても、果たして適切な質問を問いかけているだろうか? そして、次に尋ねるべき事柄を理解するために必要な、状況把握(センスメイキング)スキルを十分に会得しているだろうか? 

推論の根拠は何だろうか? あるいは、AIが提示する回答の根拠は何だろうか? 答えを額面通りに受け取るべきなのはどんな時で、逆に、さらに突っ込んだ調査が必要なのはどんな時だろうか? AIの回答は、真の意味でエビデンスに裏付けられているのか、それとも、誰かがウェブ上に残した、現実にはあり得ない推定をもとにしているのか? オリジナルの情報源は、どうやって必要な情報を取得したのか?

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こうした問いは、博士課程の学生が、多くの処置効果(treatment effects:狙った変動要素において変更をもたらすような介入)があったと主張する多数の論文に目を通す時に常に取り組むものだ。経験豊富な管理職であれば、本当の意味での処置効果をもたらすのは難しく、スキルを必要とすると忠告するだろう(たとえ人員や資材、リソースを制御下に置いていたとしても)。

5. 「自分が新たに加えられる価値は何か?」

あるトピックに関して、科学の世界で知られている事柄のほとんどは、ネット上に掲載されており、AI経由でアクセスできる。もちろん、中小企業の多くは今後も長きにわたり、旧来のインサイトを有効に活用できるだろう。しかし、新たなアイデアを生み出すことで得られる価値は、今やこれまで以上に高まっている。トップクラスのAI人材に超高額の報酬を支払う「スーパースター・エコノミー」が進行している理由の一部は、この点にある。

真の意味での生涯学習を続ける

我々のようなビジネススクールの教官は、MBAではいわゆる「ベストプラクティス」を教えるのが通例だ。今のところはこれを続けても問題ないだろう。だが、MBAを受講する者が将来も職を維持し、継続的な成功をつかむためには、新たなアイデアを常に生み出せるよう彼らを鍛え、スキルを叩き込むべきではないだろうか? 常に仮説と検証を繰り返す姿勢がなければ、成功はおぼつかない。真の意味で生涯学習を続けることが、今後は当たり前になるだろう。

要するに、我々はMBAに通う者に対しても、博士課程の学生と同じように訓練することになるのだろうか? まさに今こそ、そのような教育を始めるべきタイミングなのかもしれない。

forbes.com 原文

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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