モーリタニア出身でセネガル、フランス、ベルギーを拠点にするアメディーン・カン(Hamedine Kane)は、ブラジルのサンパウロとサルバドールでの調査をもとに、乱獲や大西洋奴隷貿易の記憶を組み合わせたインスタレーション『Les Ressources: Acte-#2(資源:第2幕、2025)』を発表。桟橋を模った台の上に、漁具や植物、布、思想家の著書などを並べ、大西洋を介して結ばれた黒人たちの歴史と文化の断片を提示した。
ンカンガのタペストリーを背景にし、カンが手がけた桟橋の作品とその両脇に配置された2つのパネル作品に囲まれ、鑑賞者は自らを太平洋に身を置くという体験を味わう。そこでは自ら海を漂いながら散らばった断片を手がかりに、点と点をつなぎ合わせるという作業が求められる。
土地と海の関係性を巡る問い、太平洋奴隷貿易の歴史、ブラック・ジオグラフィーの構築(アフリカ系の人々とアフリカの再接続)、これらに関係する哲学的な思想、そして全てを結びつけるグローバル資本主義の矛盾。ンカンガやカンの作品には、観客が自分なりに解釈を探り、理解を深め、行動を起こすための、いくつもの扉が散りばめられている。
カンは朗読と音楽を融合したパフォーミング・アートも披露。ダカールの本売りのように、書籍を頭に積み上げた姿で公演し、終演後には、本の一部が鑑賞者に手渡された。
感覚に訴える創造的アクティビズムのエネルギー
第36回サンパウロ・ビエンナーレでは、現代アートがアクティビズムとして果たす役割も際立った。マナウアラ・クランデスティーナ(Manauara Clandestina)はトランスベスタイト(異性装を行う者)の系譜を認識し、居場所を作るという意図で1000年後の未来を構想。作業着をベースにしたファッションブランドを創造し、映像作品やダイナミックなショーを披露した。


