グローバル・サウスにおける現代アートの拠点として重要な役割をになうサンパウロで、第36回サンパウロ・ビエンナーレが開催されている。会期は2026年1月11日まで。
ヴェネツィア・ビエンナーレに並ぶ歴史と国際性を持つこの展覧会は、ブラジルの現代美術シーンだけでなく、相互につながり合う世界中のアーティストの表現や活動への扉としての意味を持つ。
本稿では、ビエンナーレの現地取材を通じて、あらためて現代アートの役割について考察する。
あらゆる存在が混じり合う「エスチュアリー」
展覧会のタイトルは『すべての旅人が道をたどるわけではないー人類の実践について(Not All Travellers Walk Roads – Of Humanity as Practice)』。アフリカ系ブラジル人作家、コンセイサォン・エヴァリスト(Conceição Evaristo)の詩に着想を得た。詩的な傾聴によってのみ到達できる「水面下の世界」を探求することの重要性を喚起している。
総合キュレーターのボナベンチュラ・ソー・べジェン・ンディクン(Prof. Dr. Bonaventure Soh Bejeng Ndikung)は「ブラジルという視点から世界を考え、聴き、見て、感じるというのがコンセプト」と説明。先住民、ヨーロッパからの入植者、奴隷化されたアフリカ人の文化が交わるブラジルの歴史的文脈は、いまの時代の複雑性を紐解くためのヒントとなる。
ンディクンはドイツで活躍するカメルーン出身のキュレーター。企画チームにはブラジル出身のケイナ・エレイソン(Keyna Eleison)やチアゴ・ドゥ・パウラ・ソウザ(Thiago de Paula Souza)、モロッコ出身のアリア・セブチ(Alya Sebti)を含む5名が加わった。125の参加アーティスト/コレクティブも、境界をまたいでボーダーレスに活躍する。
準備期間にはマラケシュ、グアドループ、ザンジバル、東京の4カ所でイベントシリーズが開催され、音楽、詩、パフォーマンスを取り入れながら、地域コミュニティとの対話を促進。異なる地域の事例を手がかりに、人類の多義性についての考察を深めた。



