セキュリティ部門の役割はビジネス貢献へと進化
また、企業におけるセキュリティ部門の役割が新たに領域に拡大している点にも注目する。ここには、AIアプリケーションの「ガードレール」や、より広い意味でのガバナンスポリシーの策定に関与すること、そして経営陣に対し、AIの利点とリスクのバランスを理解させる役割が含まれる。
「企業内のセキュリティ部門の役割は、責任範囲の広がりという点でも、実際にビジネスへ影響を与え、より大きな価値をもたらすという点においても、いっそう大きなものに進化していくと私は見ている」とゲッツは語る。
AIエージェントの開発と導入は、企業の間で急速に進んでいる。マッキンゼーが発表した最新の報告書によると、企業は「人間がヴァーチャルなものや物理的なAIエージェントと協働して価値を創出する新たなパラダイム」へと移行しつつある。同社が導入の初期段階の企業と協働して得た知見によれば、AIエージェントは「大きな価値を引き出す可能性を秘めている」という。
たとえばシティグループは間もなく、社内システムにアクセスして単一のプロンプトで複数のタスクを完了できるAIエージェントを導入する。ウォルマートのCEOは、AIがすべての職種を変えると述べ、今後3年間、同社の従業員数はAIエージェントの支援を受けながら横ばいで推移すると予測している。
約1330億円市場が生まれ、セキュリティ人材の獲得競争は激化
CBインサイツによれば、AIエージェントのコーディング分野における主要6社のスタートアップは、すでに製品を展開または拡大しており、年間収益は合計8億7300万ドル(約1327億円)に達している。フォーブス寄稿者のトニー・ブラッドリーは「企業はコーディング支援ツールを猛烈なスピードで導入している」と記しつつ、「AIのパラドックスは、生産性の向上がセキュリティ上の代償を伴うことだ」と指摘している。
CBインサイツ自体もまた、AIエージェントが企業と顧客の関係をどう拡張し得るかを示す好例だ。同社のウェブサイトには、自社のAIエージェントを企業に売り込む文言として、「リサーチやデューデリジェンス、ブリーフィングなどを即座に処理する当社のAIエージェントを雇用してください。数カ月分の作業を短縮できます」と書かれている。
同社は、「生成AIとエージェント型AIの拡大が攻撃対象領域を広げ、AIセキュリティ市場の急成長を後押ししている」と報告している。こうした動きは同時に、優秀なAI人材の争奪戦にも拍車をかけている。スタートアップ創出プラットフォームのTeam8の元CEOで、現在はCheck PointのCEOを務めるナダブ・ザフリルは、「AIの世界では、すべては人材にかかっている。いかにして優秀な人材を組織に集められるかが鍵だ」と最近の決算説明会で述べていた。
AIエージェント同士が会話するようになり、新たな脅威に警戒
最新のAI技術の動向と新たなセキュリティ脆弱性の双方を追い続ける競争も激化している。ゲッツは、AIがブラウザーにますます埋め込まれるようになり、「ブラウザーがユーザーの代わりに行動を取るようになっている」と指摘する。そして、AIエージェント同士が互いに会話する、いわば“つながったエージェントの網”が広がりつつあることに、警戒の目を向けている。


