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2025.10.16 14:15

生成AIが揺さぶるSESモデル──必要とされる“人月商売”からの脱却と新ビジネスモデル再構築の未来

tope007 / Adobe Stock

作業的ワークの自動化と「成果課金」への転換

最も直接的なインパクトは、実装・テスト・運用といった作業的ワークのAI代替である。GitHub Copilotによるコード補完は開発スピードを50%以上高め、テストシナリオの自動生成も現場で実用化されつつあると報告されている。

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つまりかつて「人月」で課金していた業務のポートフォリオの再編が必要となってくる。ポートフォリオ再編として3つの方向性が考えられる。まずシステム開発のモダナイゼーション加速である。これはAIによるソフトウェアリライトやテストの自動化の分野。次にAIが運用の一部になることで、AI DevOpsを導入し、修復時間や自動解決比率などを課金の指標とすることが考えられる。作業的ワーク中心からアーキテクチャや構想支援に重心を置くといったことも重要と思われる。

SESの未来像──「人月」から「統制と成果」へ

こうした変化を踏まえると、SESの「人月売上」は確実に減少する。しかし同時に、納期短縮や品質向上という形で“AI配当”を顧客と分け合う仕組みを設計できれば、新しい収益モデルが拓けると思われる。成果連動契約(欠陥密度や納期短縮率を指標とする)やマネージドCoE(月額課金による運用統制サービス)がその典型となろう。

SES企業のとるべき戦略的方向性は以下のようになろう。

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1. 人材ポートフォリオの再編:ジュニア人材依存を減らし、アーキテクトやセキュリティ設計者、品質監査者といった“オーケストレーター”人材を強化する。
2. マネージドサービス化:市民開発アプリやAI生成物の監査・統制・ライフサイクル管理をサービス化し、月額課金に転換する。
3. 成果課金の導入:顧客が真に望む“納期短縮”“品質向上”を成果指標にし、AIによる効率化メリットを共有する。
4. グローバル競争力の確保:翻訳AIを前提に、国際案件をリモートで運営できるスキルと体制を整える。

結論──生成AI時代における「第二の創業」

SES産業は、日本経済において長らく「安定収益の源泉」とみなされてきた。しかし生成AIが常識を塗り替える今、人月依存のモデルに固執すれば急速に衰退しかねない。むしろこのタイミングは、SES企業にとって “第二の創業”の機会となろう。

顧客が求めるのは、もはや単なる労働力ではなく、AIを活かしながらリスクを制御し、成果を保証するパートナーとなる。SESがその役割を果たせるかどうかが、日本のITサービス産業全体の競争力を左右すると思われる。

時間課金から成果課金、AI利用前提のレート設計、AI生成成果物の品質責任境界といった守備範囲の明確化が重要になろう。

生成AIの波は止められない。その波に飲まれるか、あるいは波を利用して新たな航路を切り拓くか。いまSES産業は、その選択を迫られているのである。

文=茶谷公之

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