AI

2025.10.16 14:15

生成AIが揺さぶるSESモデル──必要とされる“人月商売”からの脱却と新ビジネスモデル再構築の未来

tope007 / Adobe Stock

ノーコード・ローコードの浸透が示す「市民開発」の台頭

次に注目すべきは、ノーコード/ローコード(LCNC)開発の急速な普及であろう。Gartnerの予測では、新規アプリの70%がLCNCで開発されるとされ、2025年8月時点での Microsoft Power Platformの月間ユーザー数は5600万を突破したと報告されている。

advertisement

業務部門の社員が生成AIを活用し、自ら業務アプリを設計・運用する姿は珍しくなくなった。これにより「要件定義→試作→改善」が高速に回転し、従来SESが担ってきた画面設計やワークフロー開発は時間単価を急速に失っていると思われる。これまで業務部門が社内IT部門経由で外部SES事業へ業務アプリ開発を依頼していた構図から、業務部門自身での開発が可能になりつつあるということである。

SES企業にとっての打開策は、単なるアプリ開発やシステム開発の委託先から、ガバナンス・統制・運用のマネージドサービス提供者へと進化することになろう。市民開発は担当部門による迅速で業務ニーズに沿った開発が可能になる一方、セキュリティ面や開発資源の効率的再利用の点で弱い面がある。したがって、こういた野良化する市民開発を監査・整理し、部品ライブラリや教育を組み合わせて提供することで、継続的な収益モデルを構築できる。

翻訳AIが開く「言語障壁の崩壊」

生成AIの影響は、エンジニアリング以外の領域でも顕著だ。ZoomやTeamsは同時翻訳字幕を標準搭載し、MetaのSeamlessは声の抑揚や感情を保ったままリアルタイム翻訳を実現する。かつては「日本語の壁」を盾に海外事業者の国内市場への参入を妨げてきた要因も消えてしまいつつある。

advertisement

つまり、多言語での開発・運用体制が容易になり、SES企業は国境を超えた人材活用を前提とした競争に直面している。もはや「英語力があるから有利」という構図は崩れ、翻訳AIを前提にした国際プロジェクト管理能力が新たな評価軸になると思われる。

SES事業においては翻訳業務から用語・表記・法務観点での品質設計に重心を置くといった業務シフトが顕著になろう。作業から専門性の高い業務への進化が求められよう。

次ページ > 作業的ワークの自動化と「成果課金」への転換

文=茶谷公之

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事