ネットを少しスクロールしていると、「なんだか変だな」と感じることはないか? 投稿が繰り返されたり、コメントがロボットのようだったり、会話に人間らしい温かみが欠けていると誰しも感じたことがあるだろう。
「死んだインターネット理論」
これが、いわゆる「死んだインターネット理論(Dead Internet Theory)」と呼ばれる考え方だ。つまり人間の声がどんどん減り、ボットやアルゴリズムがネット上の多くを占めているということだ。
The Conversationによると、オーストラリアの研究者、ジェイク・レンゼラ氏とブラダ・ロゾワ氏は、現代のインターネットは人間のためではなく「自動化のための空間」になりつつあると主張している。
その例の一つが、「エビのイエス様(Shrimp Jesus)」という奇妙なAI画像がバズった現象だ。この投稿のコメント欄は人間ではなく、ボットによって大量に埋め尽くされていた。
さらに、数字もこの傾向を裏付けている。サイバーセキュリティ企業の調査によると、2021年にはインターネットトラフィックの約42%がボットによるものであった。それが2023年にはほぼ50%に達し、ネット上の「いいね」や「シェア」の半分近くが人間のものではない可能性があるのだ。
加えて、AIによるテキストや画像の生成が急増しており、ネットの世界は「人が集う広場」というより、「機械が作った仮想空間」のようになりつつある。
10年前のウェブページ、40%が「リンク切れ」
もう一つの懸念は「リンク切れ(link rot)」だ。ピュー研究所の調査では、10年前のウェブページの約40%が消えていることが判明した。これにより、昔の会話や情報源を確認するのが難しくなり、ネットの「記憶」が失われているとも言える。
ただし、この理論には一定の批判もある。「大げさだ」とか、「陰謀論だ」とする声もあり、今も人間によるコンテンツは多く存在している。
しかし確かに言えるのは、今や私たちが見る情報の多くが「アルゴリズムによって選ばれている」という点だ。そしてこのアルゴリズムは、「真実」よりも「クリックされやすさ」を優先する傾向にある。
つまり、ボットが作った「釣り投稿」の方が、地道で誠実な人間の投稿よりも拡散されやすいのだ。
では、インターネットは本当に「死んでいる」のか?
今のところ、完全にそうとは言えない。今でも人は投稿し、議論し、創作している。
しかし、バランスは明らかに変わってきている。
ネットはもはや「人間の声だけの世界」ではなく、機械の声が同じくらい、あるいはそれ以上に大きな影響力を持つ空間になってきているのだ。
The Conversation:2011年にオーストラリアで誕生した、学術関係者や専門家の研究をわかりやすいニューススタイルで伝えるメディアウェブサイト
※本稿は英国のテクノロジー特化メディア「Wonderfulengineering.com」9月11日の記事からの翻訳転載である



