経営・戦略

2025.11.11 14:45

三流リーダーは部下同士を競わせ、二流はやる気にさせる。ならば一流は?

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【著者からのメッセージ】

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はじめまして、荒川詔四です。

私は、株式会社ブリヂストンに身を置いて、約40年にわたってグローバルビジネスの最前線で戦ってきました。

入社当時は、極東の一タイヤメーカーにすぎなかったブリヂストンですが、並いるグローバル・ジャイアンツを凌いで、世界No.1企業になるまでのプロセスを、一般社員、中間管理職、タイ現地法人CEO、ヨーロッパ現地法人CEO、そして本社CEOとして経験できたのは、実にありがたいことでした。

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そして、経験を通して学んできた私なりの「経営哲学」を、現役世代の経営者やビジネスパーソンのみなさんに共有したいと考え、『臆病な経営者こそ「最強」である。』(ダイヤモンド社)という本を出版することにしました。

「臆病である」ことは一般にネガティブに捉えられていますが、実際には、この「臆病さ」こそが、経営者にとって最大の「武器」であることを伝えるのが本書の趣旨です。私はこのことを、”食うか食われるか”の熾烈な競争が繰り広げられるタイヤ業界で生き残るプロセスで、骨身に染みるほどに学ばされてきました。

いつ何が起こるかわからない、この危険な世界をサバイブするためには、猛獣の出現におびえる動物のように、研ぎ澄まされた「臆病な目」で世界を見つめることが欠かせません。そして、自社がさらされているリスクを鋭敏に察知し、そのリスクを乗り越えるために的確な手立てを即座に講じる。これこそが、経営者の果たすべき最も重要な役割のひとつなのです。だからこそ、私は、経営者たる者、自分のうちにある「臆病さ」を最大限に発揮して、それを「武器」にしなければならないと思うのです。

いま世界は、地政学的な地殻変動が起きており、まさに激動のときを迎えています。おそらく、今後、世界の不確実性はさらに高まっていくでしょう。そのような状況のなか、経営者が「臆病さ」を磨きあげることは、会社の生存戦略の精度を高めるうえで、非常に重要なことになるに違いないと思っています。そのために、本書が少しでもみなさまの役に立てればと願っております。

荒川詔四(あらかわ・しょうし)◎ブリヂストン元CEO。東京外国語大学外国語学部インドシナ語学科卒業後、ブリヂストンタイヤ(のちにブリヂストン)入社。タイ、中近東、中国、ヨーロッパなどでキャリアを積むほか、アメリカの国民的企業だったファイアストン買収(当時、日本企業最大の海外企業買収)時には、社長参謀として実務を取り仕切るなど、海外事業に多大な貢献をする。

タイ現地法人CEOとしては、同国内トップシェアを確立するとともに東南アジアにおける一大拠点に仕立て上げたほか、ヨーロッパ現地法人CEOとしては、就任時に非常に厳しい経営状況にあった欧州事業の立て直しを成功させる。その後、本社副社長などを経て、同社がフランスのミシュランを抜いて世界トップシェア企業の地位を奪還した翌年、2006年に本社CEOに就任。「名実ともに世界ナンバーワン企業としての基盤を築く」を旗印に、世界約14万人の従業員を率いる。

2008年のリーマンショック、2011年の東日本大震災などの危機をくぐりぬけながら、創業以来最大規模の組織改革を敢行したほか、独自のグローバル・マネジメント・システムも導入。

また、世界中の工場の統廃合・新設を急ピッチで進めるとともに、基礎研究に多大な投資をすることで長期的な企業戦略も明確化するなど、一部メディアから「超強気の経営」と称せられるアグレッシブな経営を展開。その結果、ROA6%という当初目標を達成する。2012年3月に会長就任。2013年3月に相談役に退いた。

キリンホールディングス社外取締役、日本経済新聞社社外監査役などを歴任・著書に『優れたリーダーはみな小心者である。』『参謀の思考法』(ともにダイヤモンド社)がある。

文=荒川詔四

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