重要な仕事を「任される」から、モチベーションは上がる
しかし、その後、私が本当に彼の判断を尊重し、彼の仕事をサポートする姿勢に徹することで、彼はどんどん変わっていきました。
ふてくされたような態度は消え去り、イキイキとし始めたのです。工期との兼ね合いで激務を余儀なくされた時期もありましたが、彼は脇目も振らず全力を尽くしてくれました。
あとで聞いたら、あまりにも重責を任されていたので、「絶対に失敗できない」というプレッシャーがすごかったようですが、「今思えば、それが楽しかったですね」とニッコリ笑っていました。
これは彼だけではありません。
タイの第二工場建設プロジェクトのメンバー全員が、モチベーション高く仕事に取り組んでくれたおかげで、素晴らしい工場が完成。提案段階ではさんざん私を叩きまくった本社の役員たちの多くが絶賛してくれたほか、自動車メーカーをはじめとする取引先からも高い評価をいただき、従業員の誇りともなりました。私にとって、とてもいい思い出となっているのです。
世界中どこでも通用する「原理原則」
私は、このような経験をたくさんしてきました。
そして、先ほどの彼のように、「自分は価値のある仕事をフルに任されている」という確信をもってくれれば、誰でも例外なく、ものすごく頑張ってくれて、確実に結果を出してくれるということを身をもって学んできました。
これは、世界中どこでも通用する「原理原則」です。
私は、タイ、中近東、ヨーロッパ、アメリカ、中国など世界中でプロジェクトを手掛けてきましたが、人種、民族、宗教にかかわりなく、あらゆる人が「自分は価値のある仕事をフルに任されている」と確信したときには、どんなにモチベーションが枯渇していた人物であったとしても、見違えるように頑張ってくれたのです。
当然のことではないでしょうか?
私たち人間は、「その仕事に価値がある」と思うからこそ、「その仕事を成功させたい!」という思いが芽生えるのです。
だから、経営者が従業員のモチベーションを高めたいならば、なにはさておき、自分自身が心の底から「この仕事(事業)には価値がある」「この仕事(事業)をなんとしても成功させたい」と思っていなければならないし、その「思い」を従業員の心に届けなければなりません。


