政治

2025.10.10 12:00

ロシア国営原子力企業が外国の大型案件を次々獲得 西側企業にはない強みとは

ウズベキスタンの首都タシケントで開かれた同国初の原子力発電所の起工式に出席する同国のシャフカト・ミルジヨエフ大統領(右)とロシアのウラジーミル・プーチン大統領。2018年10月19日撮影(Kremlin Press Office / Handout/Anadolu Agency/Getty Images)

ロスアトムの強み

ロシアは近年、旧ソビエト連邦構成国や東欧諸国といった従来の輸出市場を超えて原子力外交を展開している。例えば、トルコ初の原子力発電所となるアックユ原子力発電所、アフリカ最大級となるエジプト初のエルダバ原子力発電所、バングラデシュ初のループール原子力発電所などが挙げられる。米国のドナルド・トランプ政権は最近、ロスアトムが建設したハンガリーのパクス原子力発電所の拡張計画に対する制裁を解除した。早期に廃炉することがなければ、これらの発電所は少なくとも60年間稼働することができ、ロシアを世界のエネルギー生産に関与させ続けるだろう。

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ロスアトムの強みは、統一された国家管理構造にある。同社は民生用と軍事用の研究を通じて発展したロシアの原子力工学の頂点を体現しており、伝統的な市場原理のみに制約されるものではない。米国の原子力関連の輸出は、エネルギー省、原子力規制委員会、国務省、財務省で長い手続きを経なければならない一方、ロスアトムはロシア大統領府(クレムリン)の後ろ盾を得た単一の組織として、政府間で交渉を進めることができる。

ロスアトムのモデルは、顧客が異なる利害関係を持つ複数の機関や組織と対応する必要がないことが、西側の原子力企業と異なる点だ。例えば、原子炉建屋を建設する業者は設計図に基づき安全な原子炉の建設に注力する一方、補助設備を担当する発電所周辺設備請負業者は自社の部分のみに責任を負い、いずれの当事者も複数の組織が連携する際に生じるリスクを負う。その結果、プロジェクトの遅延やリスクは、業者が契約上の義務を果たそうとする中で、遅延が連鎖的に発生する原因となる。一方、他の原子力事業者ではなくロスアトムと契約することで、リスク回避志向の顧客は支払い条件を設定し、残りをロシア政府に任せることができる。これにより、フランスがフィンランドで進めていた欧州加圧水型原子炉(EPR)建設プロジェクトのようなコスト超過や遅延を回避することができるのだ。

エジプトのエルダバ原子力発電所プロジェクトでは、ロスアトムが年利3%の22年ローンで推定250億ドル(約3兆8000億円)とされる建設費の大半を負担する。この種の合意に必要な物流面と財政面の条件を満たせる企業は、世界でも他に見当たらない。

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ロスアトムは、経済的利益を超えた地政学的目標を見据えているのだ。二国間の核燃料輸送に加え、人材交流や政府間訪問、教育協力が新たなつながりを生み出し、ロシアの影響力を高めている。トルコ、エジプト、カザフスタンなどの多くの原子力発電所は、それぞれの国で初めて建設されるものであり、ロシアの技術が各国の原子力産業発展の基盤を確立していくことを示している。

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翻訳・編集=安藤清香

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