ロシアの戦時経済は低迷しているものの、明らかな明るい材料が残っている。それは原子力だ。ロシアと中国を結ぶ新たな天然ガスパイプライン「シベリアの力2」建設の進展が注目を集めた上海協力機構(SCO)首脳会議で、ロシア国営原子力企業ロスアトムは、中国国営核工業集団(CNNC)と人的協力に関する覚書を締結した。
ロスアトムは世界中に顧客を抱えているが、原子炉建設を巡る資金調達問題と国際的な競争が激化する中、事業を拡大できるかどうかは不透明だ。だが、米国の原子力業界が衰退しつつある中、ロシアのロスアトムは競合相手であると同時に模範的な存在でもある。
ロスアトムの成功事例
ロスアトムは世界で最も有力な原子力企業の1つであり、世界の核濃縮能力の約40%を占め、現在は国内外で40件近くの案件を同時に進めている。同社は最近、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギスで次々と案件を勝ち取っており、西側の制裁を受けながらも競争力を維持していることを示している。小型モジュール炉(SMR)の建設を含む技術的能力に加え、ロスアトムは巨大な国営企業としての地位を活用し、ウラジーミル・プーチン大統領の営業手腕にも頼りつつ、競合他社には真似できない国庫からの優遇融資条件を提供している。
だが、資金調達面は主な強みではない。中国はさらに有利な条件を提示できるからだ。自国で十分に訓練された専門家を擁していることが求められる米国のウエスチングハウスやGEベルノバ日立ニュークリアエナジー(GVH)といった西側の企業とは異なり、ロスアトムは独自の一括請負契約を提供している。同社は、立法の整備支援や規制機関の設立、適切な資金調達モデルの提案、使用済み核燃料や廃棄物の管理を通じて、原子力技術が未熟な国でも原子力発電所の建設を可能にしているのだ。
カザフスタンは6月、同国初となる原子力発電所の建設をロスアトムに託した。これは、中国のCNNC、フランス電力(EDF)、韓国水力原子力発電(KHNP)といった各国の原子力企業が名乗りを上げていた中でのロスアトムの外交上の大きな勝利だった。国際原子力機関(IAEA)がコンクリートの流し込みと定義する建設工事は、2027年に開始される見通しだ。カザフスタンでは先月、2.4ギガワット級のロシア型加圧水型原子炉(VVER)1200の建設が開始された。これにより、同国の増加する人口のエネルギー需要を満たすことが期待されている。
ロシアの原子力輸出計画はこれだけではない。ロスアトムは2022年、キルギスとエネルギー協力に関する覚書を結び、将来の原子力発電所建設を巡る議論を活発化させた。同社は今年8月、同国と風力発電所の共同建設で合意し、2026年に着工する予定だ。さらに昨年5月、ウズベキスタンと55メガワット級SMR「RITM-200N」6基の建設でも合意。最初の1基は、来年にも建設が開始される見通しだ。ロスアトムはセルビアとも原子力発電所の建設について協議中で、同国は同社の能力と融資制度に信頼を表明している。



