家具事業を3倍に成長させる計画、Z世代向け商品で競合に対抗
ホルカルはまた、家具チェーン「Interio（インテリオ）」では、売上高を2025年度の4億1000万ドル（約623億円）から2029年度に12億ドル（約1824億円）へと約3倍に引き上げることを目標としている。同社は、主に地方の中核都市を中心に500店舗を新設するため、3500万ドル（約53億円）を投じて店舗網を1500店舗規模に拡大する計画だ。ハイデラバードに拠点を置く市場調査会社Mordor Intelligenceによると、インド国内の家具市場は、中間層の拡大と急速な都市化を背景に今後5年間で年平均7.6％のペースで拡大し、2030年には430億ドル（約6.5兆円）規模に達する見通しだ。
Interioは、ミレニアル世代やZ世代の取り込みにも力を入れており、ゲーマー向けの人間工学設計チェアや、屋外用アルミ家具、子ども部屋向けの新しい家具シリーズを導入している。同社の主力商品であるスチール製ワードローブは、依然として売上の約半分を占めるが、これまでの実用的なグレー一色から、ベイクドアップルやダスティローズなどの多彩なカラーと仕上げを選べるようにした。
オンライン需要を取り込むために、ホルカルは家具部門のEC事業を強化し、対応エリアを2022年の4000郵便番号から、2025年3月末時点で1万8000郵便番号まで拡大させた。実店舗では、最大約1900平方メートルのスペースを活用した「フラッグシップ・エクスペリエンス・ストア」を展開し、部屋ごとにコーディネートされた展示形式に刷新した。
「当社は、倉庫型の店舗モデルから脱却した。顧客が『どのように家具を組み合わせればいいのか』を知りたがっていることに気づいたからだ」とホルカルは語る。
彼女は、ショールームを訪れる顧客の視線の動きや興味を把握するために、視線追跡（アイ・トラッキング）やヒートマップ、心拍数分析といったハイテク手法を導入している。一方で、より伝統的な手法として、過去1年にわたりインド各地の都市で一般家庭を訪問し、人々がどのように住空間を使っているのかを直接観察してきた。
「コロナ禍によって、消費者心理は大きく変化した」と彼女は説明する。「パンデミック以前は、私たちは自宅にいる時間が少なかったため、家のことをあまり重視していなかった。でも今は、ドアの取っ手の色が扉と合っているかまで気にするようになっている」。
市場調査会社Mordor Intelligenceによると、Interioはインドの家具市場で売上首位に立っている。ただし市場は非常に分散しており、同社は数千にのぼる中小の独立系プレーヤーに加え、ムンバイ拠点のNilkamal（ニルカマル）、Durian Industries（デュリアン・インダストリーズ）、オランダに本社を置く巨大企業IKEA（イケア）、そして先月、アーメダバード拠点の不動産サービス会社TCCコンセプトが買収を発表したオンライン家具販売のPepperfry（ペッパーフライ）などとの競争に直面している。
ホルカルは、インテリオの強みが「デザインからエンジニアリング、サプライチェーン、アフターサービスまで、バリューチェーン全体を自社でカバーしている点にある」と語る。Mordor Intelligenceのシニア・リサーチアナリスト、デヴァルシ・メータもこの見方に同意している。彼女はEメールで、「ゴドレジは長年にわたる消費者の信頼、安定した製品品質、そして全国規模の供給を支える巨大な流通網を強みとしている」とコメントした。
ブランドの近代化に向けたホルカルの強い意志も、同社の大きな強みと見られている。Interioの事業責任者スワプニール・ナガルカルは、7年間ともに働いてきたホルカルについて「彼女は徹底的に顧客志向を貫いている。常に『どうすれば製品をより現代的で洗練されたものにできるか』を考えている」と語る。
そして、家具の需要を押し上げている要因は、家電製品の需要拡大にもつながっている。インド商工会議所連合会（CII）と会計大手EY傘下のEYパルテノンが2024年に共同で発表した報告書によると、インドは世界で最も成長が速い耐久消費財市場だ。市場規模は、2029年度までに年平均11％のペースで拡大し、350億ドル（約5.3兆円）に達すると予測されている。ゴドレジ・アンド・ボイスの家電部門は、2025年度に8億2000万ドル（約1246億円）の売上を計上し、2026年度には30％の成長を見込んでいる。
