働き方

2025.11.20 10:15

「日本のワークプレイスはもっと面白くなる!」 世界を見たデザイナー6人が語る“働く場の再発明”

密集する都市に、限られたスペース。東京、そして日本のオフィスは面積やコスト、制度の制約のなかで、いかに効率的に人を配置し組織を動かすかを模索しながら発展してきた。整然としたレイアウトや均質な空間設計は経済成長を支えたが、その裏で企業の文化や人の感情は長らく置き去りにされてきたとも言える。

そんななか、「働くとは何か」を改めて問い直す建築デザイナーたちがいる。国内外でオフィス設計を手がけるプロフェッショナルが集い、オカムラも立ち上げに参画したデザイナーコンソーシアム「why work tokyo」。

WORK MILL with Forbes JAPAN』では、世界各地のオフィスを取材するとともに、日本発の動きとしてこのコンソーシアムの試みを紹介する。欧米モデルの模倣ではなく、日本独自の価値観や美意識をもとに、これからの「働く場」を考えていこう。


本座談会には、オフィスデザインを手掛ける野村大輔(Dada)、前嶋章太郎(SAKUMAESHIMA)、木下陽介(CANUCH)、新海一朗(SIGNAL)や、企業の組織課題に寄り添うワークプレイスコンサルタントの北村紀子(Athena)、「why work tokyo」の立ち上げにも参画した家具メーカーのオカムラから、スペースデザイン部をまとめる佐々木基の6人が参加。

近年、グローバルスタンダードに倣ったオフィスデザインが日本にも急速に広がっているが、「効率」「機能美」といった価値観の先に、日本ならではの“豊かさ”をどう見出せるのか。
その出発点として、まず「日本的デザインの本質」とは何か――この問いを立てた。

日本的デザインは“働く場”をどう捉える?

野村大輔(以下、野村): 日本のユニークネスといえば「精神性」なのではないでしょうか。設計をする際には、その文化をいかに空間に落とし込むかを考えることが多いです。

例えば天然石を加工せずに使うなど。ヨーロッパでは削って整えることが多いですが、日本は“自然の造形美”をそのまま尊重する印象です。素材から哲学を語るような設計は非常に日本らしいのではないかと考えています。

Signalが手がけた三井住友アセットマネジメントのオフィス空間。日本家屋や庭の構造をモチーフに、オフィス空間を「暮らしの延長」として再構成している。
SIGNALが手がけた三井住友アセットマネジメントのオフィス空間。日本家屋や庭の構造をモチーフに、オフィス空間を「暮らしの延長」として再構成している。 (写真提供/エスエス)

前嶋章太郎(以下、前嶋):僕も素材感は毎回意識しています。手触りや、素材のサイズ・スケール感など、全体の距離感も含めて考えます。日本では光の扱いも大きいですね。

平滑な木材ではなく、あえて凹凸や荒さを入れて光を受けさせるなど、艶・マット感を意識し、素材に光がなめらかに入るとそれだけで日本的な空気になると感じます。

木下陽介(以下、木下):リチャード・E・ニスベットの著書『木を見る西洋人 森を見る東洋人』では、西洋人が「木(モノ)」を見るのに対し、東洋人は「森(状況や体験)」を見る傾向があると述べられています。これは日本の生活者が「余白や空間を通じて、そこで起りうる状況や体験を想像しやすい」という特徴を表しているのではないでしょうか。それが日本の美意識や空間デザインにも表れているのではないかと感じます。

SAKUMAESHIMAが手がける、余白を生かした菱熱工業(東京・品川)の新オフィス。オフィス を1フロアに集約し、デスク間隔を2,100mmに設定。ゆとりあるレイアウトを実現した。(写真提供/ _Masaaki Inoue, BOUILLON)
SAKUMAESHIMAが手がける、余白を生かした菱熱工業(東京・品川)の新オフィス。オフィス を1フロアに集約し、デスク間隔を2,100mmに設定。ゆとりあるレイアウトを実現した。(写真提供/ _Masaaki Inoue, BOUILLON)
(写真提供/ _Masaaki Inoue, BOUILLON)
(写真提供/ _Masaaki Inoue, BOUILLON)
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文=伊藤七ゑ

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