バイオ

2025.10.13 11:15

地球温暖化によりクジラと船との衝突事故が増える恐れ

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クジラの脳は、右脳と左脳が独立していて交互に眠ると言われている。しかし実際は、半分起きて泳ぎながら眠る場合と、人間と同じように完全に眠る場合とがある。どっちにするか、クジラはどうやって判断しているのかは、これまでよくわかっていなかった。それを東京農業大学は、観測によって世界で初めて解明した。

東京農業大学大学院農学研究科の青田幸大大学院生(現在は東京大学大学院に所属)らによる研究グループは、飼育下の鯨類の観察から、その睡眠行動が水温によって変わることを突き止めた。クジラの睡眠には、筋運動をともなう「遊泳型睡眠」と、ほとんど運動しない「静止型睡眠」の2種類がある。

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哺乳類のクジラは肺呼吸なので、ときどき海面に上がって息継ぎをしなければならない。また、海水で体が冷えてしまわないよう運動で体温を保つ必要もある。そのため泳ぎながら眠ると考えられているが、どちらで眠るかは個体によってさまざまで、その判断基準がわからなかった。

そこで研究グループは、クジラの体温保持に着目し、体重が100〜1万キログラムの飼育下のクジラ10種類を観察した。すると、体のサイズが大きいクジラほど静止型睡眠が増え、小さいほど遊泳型睡眠が増えることを定量的に確認できた。また、水温が低下したときも、それにともなって遊泳型睡眠が増えた。このことから、体が小さいほど体温が奪われやすく、筋運動で熱産生をしながら眠る遊泳型睡眠が増えるものと考えられた。

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この研究の論文発表者の1人である千葉商科大学の関口雄祐教授は、大型のマッコウクジラが船に衝突する事故がよく聞かれるがイルカの衝突事故はあまり聞かないことを例にあげ、大型種ほど静止型睡眠が多いことが理解できると話す。マッコウクジラは、静かに眠って海面を漂っているときに船にぶつかるものと想像される。また、地球温暖化による海水温の上昇で、小型のクジラも静止型睡眠をすることが増えれば、船舶衝突事故が増える恐れがあるとの懸念も示している。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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