高金利と延滞リスク、事業モデルに横たわる課題
年収がわずか5000〜1万5000ドル(約76万~約230万円)の人々に、20〜500ドル(約3040円~約8万円)の少額融資を行うビジネスを成り立たせるのは容易ではない。どんなに小口の融資でも一定の固定コストが発生するため、マイクロローン事業の採算性は著しく低い。投資家は低所得層向けの融資に慎重な姿勢をとる傾向があり、こうした顧客は返済が遅延しがちだ。現在、Talaの世界全体の顧客のうち約10%が返済を完了できておらず、この延滞率は米国のクレジットカード利用者の2倍以上、ブラジルのデジタル銀行Nubank(ヌーバンク)の顧客よりも50%高い水準にある。
そのためTalaは、高い金利を設定せざるを得ない。フィリピンで同社は、法的に認められた上限である最大15%の月利を課しているが、これは、年換算利率(APR)にすると183%にも及ぶ。同国で最大の競合であるGCash(ジーキャッシュ)は、公式サイトによると月利7%に加え、3%の手数料を上乗せしている。
メキシコでは、Talaは月利24%(年換算約288%)を設定しており、競合のBaubap(バウバップ)やKueski(クエスキ)とほぼ同水準だ。ただしTalaによれば、同社はこれらの競合よりも所得水準の低い層を主な対象としているという。また、クレジットカードと異なり、Talaのローンは「リボルビング金利」を採用しておらず、貸出期間を過ぎても追加の利息が発生することはないという。
シローヤは、Talaが「延滞リスクを十分に管理できている」と強調する。同社には10年分の融資データの蓄積があり、その中には新型コロナの初期に経験した深刻な景気後退期のデータも含まれていると彼女は指摘する。また、融資の平均期間は約30日(最長で6カ月)と短く、必要に応じて貸出額をすぐに抑制できる。
今後の成長の大部分は同社がすでに熟知した市場から生まれる見通しだ。広報担当のローレン・プルネスキによると、今後2年間の売上成長の75%は、フィリピン、メキシコ、ケニアという3つの主要市場が占める見込みという。
こうした見通しを背景に、シローヤは「黒字化よりも成長を優先し続ける」という自らの戦略を擁護する。彼女は、Talaが2021年以来、新たな資金調達を行っていないことを挙げ、「そうした観点から、コストを持続可能な水準に保ちながら成長を追い続けることができている」と語る。「私たちの掲げるミッションを実現するには、成長に焦点を当て続ける必要がある」と付け加える。彼女は、これまで重点的に投資してきたテクノロジー、インフラ、データの分野が、会社の急速な成長を支え、2026年第1四半期末までに採算ラインに乗せる原動力になると考えている。
競合は堅実経営で黒字化
一方、2014年創業のサンフランシスコ発のフィンテック企業Branch(ブランチ)は、インドとアフリカの消費者向けに少額融資を行っているが、その経営方針はTalaよりも慎重かつ堅実だ。パンデミックの初期に全従業員の半数を削減した創業者兼CEOのマット・フラナリーは「黒字を義務づける自己ルールを設け、あらゆる意思決定に採算性の論理を適用した」と語る。これは、彼にとって経営方針を根本から覆す大きな転換だった。
Branchは現在、650万人の月間アクティブユーザーを抱え、その9割がインドに集中している。同社の月間融資額は、Talaの約55%に相当する8000万ドル(約122億円)に達しており、年間換算収益は約1億4000万ドル(約213億円)だ。フラナリーは、Branchが2025年に税引後で2000万ドル(約30億円)の純利益を上げると見込んでいる。
CEOが警戒するAIの進化と競争激化、将来に向けた次の一手
Talaのシローヤは、多くのテック企業のCEOと同様に、自社の成長スピードが十分でないことを最大の懸念に挙げる。彼女が「夜も眠れないほど気になる」と語るのは、データの利用可能性が急速に広がり、AIが進化している現状だ。この2つの要素が組み合わさることで、資金力のあるテック企業がかつてないスピードで融資事業に参入できるようになる可能性があると、シローヤは警戒している。
そのため彼女は、Talaを新たな領域へと押し広げようとしている。6カ国での事業拡大にとどまらず、ステーブルコインベースのウォレットを立ち上げ、銀行口座のように利息を得られる仕組みの導入も計画中だ。また、Talaがまだ事業を展開していない先進国からの国際送金を、顧客が受け取れるようにしたいと考えている。その計画に向けてシローヤは、すでに大規模な顧客基盤を持つ他のフィンテック企業との提携も視野に入れている。
こうした数々の目標は、Talaが今後、資金調達を行うのか──あるいは、より現実的にいえば「いつ行うのか」という疑問を生じさせる。シローヤは同社の手元資金の具体的な額については明らかにしなかったが、成長を加速させる段階で追加の資金確保を検討する可能性があると述べている。ただし現時点では、「それが経営の中心課題ではない」と強調した。


