海外

2025.10.14 13:00

11年間赤字、新興国向け少額融資の米Talaが「成長による黒字化」狙い世界展開

Tala創業者でCEOのシヴァーニ・シローヤ(Photo by Cindy Ord/Getty Images for Girlboss Rally NYC 2018)

独自与信テクノロジーを開発、成長による黒字化への挑戦

Talaはそれ以来、着実に成長を続けている。売上は前年から35%増え、今年の年間換算収益は3億4000万ドル(約517億円)に達する見通しだ。また、収益を生み出しているアクティブ顧客は180万人を超えている。こうした追い風を受け、Talaは新たな国々への進出によって2027年末までに融資規模を倍増させるという野心的な計画を打ち出した。リスクをより正確に見極める独自の与信テクノロジーを開発したことで、より多くの申込者に安全に融資できるようになったと同社は述べている。

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Talaは、融資事業を始めてから11年重ねた後も、依然として赤字である。ただしシローヤは「成長を追うのをやめれば、いつでも黒字化できる」と話す。典型的なシリコンバレー流の経営スタイルを掲げるTalaは、リスクの高いこのビジネスで「成長による黒字化」を狙っている。シローヤは、2026年第1四半期末までに同社を採算ラインに乗せる見通しを示している。

他の大手のフィンテックの貸し手も、同じ戦略を取ってきた。たとえば、2013年に設立されたAffirm(アファーム)は、2020年に1度だけ黒字を記録した後、2025年第2四半期に再び黒字化を果たした。2012年創業のSoFi(ソーファイ)も同様なアプローチで、2023年末から継続的に黒字を維持している。

創業以来、主に3カ国で事業を展開してきたTalaは、先日4カ国目となるグアテマラへの進出を果たした。今後3〜6カ月で、ドミニカ共和国、パナマ、ペルー、ベトナム、インドの5カ国でもサービスを開始する予定だ。この取り組みに向けて同社は、より個別化されたリスク評価を可能にし、新たな市場への展開を迅速に進めることを可能にするテクノロジー基盤を再構築した。

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シローヤが2011年にTalaを創業したとき、彼女が挑んだのは、金融サービス業の中でも最も収益化が難しいとされる事業──すなわち、新興国の低所得層に資金を貸し出すという事業だ。潜在的な顧客の信用情報が入手できず、収入を確認するのも困難な環境のなかで、彼女は独自のリスク判定法を考案した。それは、借り手候補の携帯電話データへのアクセスを求め、テキストメッセージ内の領収書などの情報から、電話代の支払い状況や携帯電話の使用年数などを把握するというアプローチだった。

ネットフリックス出身CTOが新データエンジンの構築を主導、個別リスク評価へ移行

Talaは、そのデータをもとに独自の信用スコアを作成し、顧客を低リスクから高リスクまでの大まかな区分に分類した。Talaの最高技術責任者(CTO)であるケリー・アップホフは、この手法について「革新的だったが、区分が保守的かつマニュアルで、パーソナライズされていなかった」と語る。ネットフリックスで約10年間、コンテンツとマーケティングのデータ戦略を率いた彼女は、今から4年前にTalaに入社した。「私たちは当時、本来なら良い顧客になり得た人たちを審査で落としていることを分かっていた」とアップホフは話す。

Talaに加わった後、アップホフは、新たなデータエンジンの構築を主導した。これによりTalaは、精度の低いスコア区分方式から脱却し、個別化されたリスク評価モデルへと移行を果たした。この新システムは、アップホフがネットフリックスで用いていたオープンソースのツールと「統計的因果推論(causal inference)」と呼ばれる統計手法を活用したものだ。これは、実験データや対照群がなくても、多数の小規模テストを継続的に実施して因果関係を導き出すアプローチだ。

さらに統計モデルの刷新に加えて、Talaは融資リスク評価に用いるデータ源も多様化させた。その理由の1つは、グーグルがデータへのアクセスを制限する可能性があるAndroid OSの情報に依存したくないからだ。Talaは現在、申込者がローン申請をどの程度の速さで進めるかといったアプリ内での行動データに加え、学歴や他社からの借入状況などの要素も分析対象としている。

この新たな与信モデルは、現時点ではメキシコでのみ導入されているが、最終的には全市場で展開する計画だ。この1年間でTalaは、承認率を約40%から最大80%に引き上げたが、同等の信用プロファイルを持つ顧客同士を比較した場合の延滞率は低下している。

シローヤによるとTalaは現在、月間1億4500万ドル(約220億円)の融資を行っているという。また、新たな仕組みを導入したことで、新市場向けの融資モデルの構築が12カ月から3カ月に短縮したという。

Talaの拡大計画には、中南米4カ国とアジアの2カ国が含まれている。同社は先日グアテマラで事業を開始したのに続き、12月末までにパナマ、ドミニカ共和国、インド、ベトナムでの展開を予定している。2026年第1四半期には、2024年に暗号資産ベースのデジタルウォレットを試験導入したペルーでの本格展開を予定している。このような地理的に離れた新市場の選定基準は明確だ。Talaは、既存市場と同程度の所得水準でありながら、十分な金融サービスを受けられていない人々が多く暮らす地域を選んでいる。

巨大なインド市場へ再挑戦、ノンバンクのライセンスを取得

また、Talaはすでにインドで1度つまずきを経験している。人口14億5000万人を抱える世界最大の市場であるインドは、誰の目にも魅力的なターゲットで、シローヤは2018年の時点で進出を公言し、2020年には少数の顧客を対象にアプリを試験導入していた。しかし、Talaは経済的に持続可能な事業に不可欠な貸金業ライセンスを取得していなかった。その結果、融資コストが過大になってしまった。Talaは今年初めにようやく現地のノンバンクのライセンスを取得し、いよいよ本格的な事業展開の準備を整えた。

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翻訳=上田裕資

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