古くからの盟友、ジョン・ポールソンとは何者なのか
ジョン・ポールソンは、1994年にヘッジファンド「ポールソン・アンド・カンパニー」を設立し、現在はファミリーオフィスとして運営している。トランプが2016年の最初の大統領選で経済政策チームを立ち上げた際、ウォール街で最初期から支援した人物の1人だ。
ポールソンは、2024年4月にフロリダ州パームビーチの自宅でトランプのための資金集めイベントを主催し、5050万ドル(約77億円)を集めた。昨年の政権移行期に財務長官候補として名前が挙がっていたが、最終的にトランプが選んだのはスコット・ベッセントだった。彼は今回の取引に関するコメント要請に応じなかった。
政権交代が追い風に、長年の投資がついに結実?
2012年5月、当時NovaGold Resources(ノバゴールド・リソーシズ)から分離独立したばかりでNovaCopper(ノバカッパー)と呼ばれていたTrilogyが上場して以来、ポールソンは同社の大株主として名を連ねてきた。彼は当初、同社の600万株を保有していたが、その後は少しずつ買い増して2019年6月には1430万株を保有するまでになった。米証券取引委員会(SEC)の報告によれば、彼の持ち株比率はその後、変わっていない。
Trilogy Metalsの株価は、2012年の上場初日に3.73ドル(約567円)で取引を終えて以来、激しい浮き沈みを繰り返してきた。同社株は、2016年1月には1株16セント(約24円)まで下落したが、ポールソンは2014年と2015年に割安な水準で持ち株を買い増した。その後は2019年に3ドル(約456円)超まで回復したものの、バイデン政権が、同社のアラスカ州プロジェクトの始動を難しくする政策を打ち出したことを受けて、2024年4月には再び37セント(約56円)に下落していた。
しかし昨年の大統領選の翌日、同社により友好的な政権の誕生への期待からTrilogy Metalsの株価は79%急騰。そして今月7日には、前日比245%高の7.25ドル(約1102円)で取引を開始し、過去最高値を更新した。午前10時時点では6.57ドル(約999円)まで値を下げたものの、それでも前日比210%高を維持し、時価総額は11億ドル(約1672億円)に達した。Trilogy Metals株の昨年の選挙日からの上昇率は1000%に達している。
同社株のパフォーマンスは、従業員がわずか5人で売上がゼロ、直近12カ月の純損失が920万ドル(約14億円)という小規模企業にしては上出来だ。ただし、Trilogy Metalsは、大統領執務室に強力な後ろ盾を従えている。
異例の直接投資を続ける政府、市場への影響力
トランプ政権が今年に入り、株式への直接投資で市場を動かしたのはこれが初めてではない。米政府はすでにインテルやMPマテリアルズ、リチウム・アメリカズの株式を取得しており、他の鉱山会社とも協議を進めていると噂されている。これらの企業はいずれも政府からの投資の発表を受けて株価を急騰させたが、その中で最も規模が小さいTrilogy Metalsの上げ幅が最も大きかった。
推定資産が40億ドル(約6080億円)のポールソンにとって、Trilogy Metalsの株価の急騰は自身のポートフォリオをさらに押し上げた。長年の金(ゴールド)強気派である彼は他にも金鉱株を保有しており、これらの持ち株の価値は第2四半期末時点で合計6億ドル(約912億円)に達していた。たとえば、Perpetua Resources(パーペチュア・リソーシズ)、Agnico Eagle Mines(アグニコ・イーグル・マインズ)、Novagold Resources(ノバゴールド・リソーシズ)などだ。そして、今夏の金価格の上昇局面で売却していなければ、現在では10億ドル(約1520億円)を超えていると試算できる。
財務長官にならなかったことが、莫大な資産を守る
これら3社の株価は、いずれもこの1年で2倍以上に上昇しているが、Trilogy Metalsの上昇率に比べれば、その伸びもかすんで見える。ポールソンは、財務長官に選ばれなかったことをむしろ安堵しているかもしれない。もし就任していれば、倫理規定に従ってこれらの資産をすべて手放す必要があったからだ。


