政治

2025.10.09 15:15

高市氏の「ワークライフバランスという言葉を捨てます」が瞬時に伝わった3つの理由

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人を動かす要素3. 結晶化

第三の要素は、結晶化だ。

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相手の論点に焦点を合わせて答える、それも尖った答えを伝える、そんなときに、最後にその答えを生々しい言葉に磨き上げることだ。

そのためには、抽象的な言葉を避けて具体的な言葉にし、そして、相手が普段使うわかりやすい言葉を使った方がよい。

この「私自身もワークライフバランスという言葉を捨てます」というメッセージを一番生々しくしているのは「私自身」という主体を具体で言葉にしたところだろう。

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その私自身とは目の前に映っている人なので、生々しいのだ。この「私自身」という言葉がなくても行間を読めば意味は伝わるのだが、短い一文で刺さるように伝えるのであればこの「私自身」という言葉はあった方がプラスだ。

そして、「ワークライフバランス」という政治家はあまり使わないが、聞き手であり、この場での相手である一般社会人がよく使う言葉を使って伝えている。

このため、なにか受け止める側で言葉の翻訳作業が必要なく、直感的に自然と一瞬で理解できる。

よくある政治家のよくない1メッセージは、このような場面でことわざや故事成語を持ち出すものだ。たとえば、この場合であれば「私自身も勇往邁進していきます」などと言うもの。知識があるのはわかるが、相手を無駄に考えさせてしまったり、相手に伝わらなかったりしてしまう。相手に伝わらないことを伝えたところで、カッコつけにしか思われないので、人を動かすことはない。

今回の「私自身もワークライフバランスという言葉を捨てます」はそのようなよくない1メッセージとは真逆にある。

「人を動かす1メッセージ」は焦点化、先鋭化、結晶化がされているものだが、今回の「私自身もワークライフバランスという言葉を捨てます」はその3つを充足している。

あえて言えば、「ワークライフバランス」という言葉よりも、もっと定義が揃う言葉を使うと、より先鋭化できるかもしれない。

ワークライフバランスは、人によって解釈にブレがある。もともとは、表面的にはワークとライフのバランスを自分に合うようにとるという意味だが、人によっては、ワークの比重を下げるという意味で捉える人もいる。また、ワークがライフの一部であれば、全てがワークでもバランスがとれる人もいて、人によってまちまちになる。

このため、誤解を招いたり、解釈に迷ったりしてしまって、伝わりにくい部分がゼロとは言えず、ここにもっとメッセージが刺さるようにできる余地はある。

ただし、それくらいであり、この「私自身もワークライフバランスという言葉を捨てます」は、ほぼほぼ「人を動かす1メッセージ」の要素を充足している。

なお、今回の「私自身もワークライフバランスという言葉を捨てます」の分析は、「人を動かす1メッセージ」の3つの要素からのものであり、好き嫌いや、政治的や政策的な良し悪しを評価するものではないことを、改めて付記しておく。

1メッセージは、未来を変える

1メッセージは、大事な場面での一瞬での伝え方として最強だ。

シンプルだが、相手に伝わりやすい。結果として、人を動かし、人が動くから未来を変えたりもする。しかし、そのためにも、その一文の細部まで拘った方がよい。繰り返すが、それ次第で、未来が変わるからだ。

たかが1メッセージ、されど1メッセージだ。



『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』(杉野幹人著、ダイヤモンド社刊)
1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』(杉野幹人著、ダイヤモンド社刊)




(本原稿は『1メッセージ 究極にシンプルな伝え方』を一部抜粋・大幅加筆したダイヤモンド・オンラインの記事からの転載である)

文=杉野幹人

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