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2025.10.09 09:00

米国の金取引価格が「初の4000ドル突破」、その背景には何が

Sven Hoppe/picture alliance via Getty Images

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米国における金取引価格は現地時間10月7日、再び過去最高値を更新し、初めて1トロイオンスあたり4000ドルの大台を突破した。政府閉鎖、雇用市場の悪化、そして持続するインフレの中で、エコノミストたちはこの貴金属を「安全資産」として称賛している。

ニューヨーク・マーカンタイル取引所では、投資家がヘッジ目的で利用する米国の金先物価格が、7日に1トロイオンスあたり約4005ドルまで急騰した。

ゴールドマン・サックスのコモディティ・ストラテジストであるリナ・トンプソンは、今年初めに金価格が上昇し始めた際、「米国における経済および政策の不確実性が高まる時期には、投資家は金を好む傾向がある」と述べていた。その言葉通り、ドナルド・トランプ大統領が貿易交渉を激化させ、より広範な関税措置を発動する直前の3月、金価格は初めて3000ドルを突破した。

10月初旬、上院が政府閉鎖を回避する法案を可決できなかった後、金価格は3900ドルを超えて新たな最高値を更新した。一方、ビットコインや株式など、よりリスクの高い資産は下落している。

LPLフィナンシャルのチーフ・テクニカル・ストラテジストであるアダム・ターンクイストは7日、「今回の金価格の上昇は、政府閉鎖をめぐる不確実性の高まりに支えられている」と述べた。その上で、米ドルの弱含み、連邦準備制度理事会(FRB)による利下げへの期待の高まり、そして「関税関連のインフレ懸念」が、今年これまで金価格を押し上げてきた要因であると指摘した。

金価格は、米ドルや長期米国債利回りの下落と連動する傾向がある。これらはここ数カ月でそれぞれ4.6%および3.6%下落している。

著名ヘッジファンド・マネージャーのレイ・ダリオは7日、「金は、他の投資がうまくいかないときに非常に良いパフォーマンスを見せる唯一の資産だ」と述べ、「ポートフォリオの15%程度を金に振り向けるべきだ」と主張した。

ゴールドマン・サックスのアナリストは以前、2026年半ばまでに金価格が3000ドルに達すると予測していたが、今回新たに2026年12月の価格予想を4900ドルにまで引き上げた(従来予想は4300ドル)。この予想修正に象徴されるように、ウォール街は今年これほどまでに金価格が上昇するとは予想していなかった。JPモルガン・チェースは2月の時点で年末の価格目標を2950ドルと予測し、シティグループは年末までに3000ドルに達すると見込んでいた。しかし、金価格は3月の時点でその水準を突破していた。

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翻訳=江津拓哉

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