キャリア・教育

2025.10.09 12:30

ひと言も発さずに、「良い第一印象」を長く残す「2つの方法」

映画『工場の出口』より(Wikipedia, パブリックドメイン)

映画『工場の出口』より(Wikipedia, パブリックドメイン)

1895年、フランスのリュミエール兄弟(オーギュストとルイ)は、世界初の動く映像による映画のワールドプレミアを開き、短い無声映像『工場の出口』(La Sortie de l'usine Lumière à Lyon)を上映した。これは広く映画誕生の出来事と見なされている。その三十数年後、今日から遡ればほぼ1世紀前に、ワーナー・ブラザースは世界初のセリフと音楽が同期した長編映画『ジャズ・シンガー』(The Jazz Singer)のワールドプレミアを行った。その2つの出来事の間に、映画産業はビジネス、文化、社会における大きな力へと飛躍的に成長した――しかもサイレント映画の時代に。その過程で、ダグラス・フェアバンクス、ルドルフ・ヴァレンティノ、メアリー・ピックフォード、グレタ・ガルボ、そしてチャーリー・チャップリンは、誰もが知る存在になったが、彼らは一言も発することなくそれを成し遂げた。

ここで強調したいのは、身体的な表現力がコミュニケーションの要素として持つ力だ。これは、次の4つの情報源からも裏づけられている。

(1)『ザ・アトランティック』の著名な全国担当記者で、大統領候補の討論会を専門に扱ってきたジェームズ・ファローズは、かつてこう書いた。「多くの討論会で『勝者』を判断する最も簡単な方法は、音声を消して見ることだ。そうすれば、候補者の気安さ、緊張、ユーモア、その他の特性を、彼らのボディランゲージが示す通りに評価できる」。

(2)スタンフォード大学、ミシガン大学、ノースカロライナ大学のビジネススクールの研究者は、IPOに際しての投資家向け説明会の映像を選んだ聴衆に見せ、「経営陣に対する投資家の認識が企業価値にどのように影響するか」を調べる研究を実施した。『ウォール・ストリート・ジャーナル』の報道は要点を次のように伝えた。「投資家向けのピッチで、最高経営責任者(CEO)の身ぶりや立ち居振る舞いから有能さが伝わるほど、IPO価格は高くなりやすい」。

(3)UCLA心理学科が実施した、しばしば引用される研究では、コミュニケーションにおいて非言語(身ぶり・表情など)が、言語(内容)や声(話し方)よりも高い重要度を持つとされた。

(4)ベストセラー作家マルコム・グラッドウェルは著書『第1感~「最初の2秒」の「なんとなく」が正しい~』(Blink: The Power of Thinking Without Thinking)で、第一印象――すなわち人が「最初の2秒」で下す即断――について論じている。

以上の資料から、プレゼンテーションの場では見た目と振る舞いがいかに重要かが分かるはずだ。皮肉なことに、多くの発表者は時間と労力のほとんどを内容に費やす。だからといって、話の組み立てを忘れて伝え方だけに集中すべきだということではない。方程式の両辺に等しく力を注ぐべきであり、メッセージと同じだけメッセンジャー(話し手)にも注力すべきなのだ。

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翻訳=酒匂寛

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