━━それがかたちになり始めていますね。いくつか論文も発表され、話題になっています。同時に、資金調達でも成功を収めています。「営利目的の研究・開発ラボ」であるSakana AIは、出資者とはどのような関係を築いているのでしょうか。
ジョーンズ：私たちはじっくりと時間をかけ、多くの投資家と対話を重ねました。私たちに本当に合うパートナーを見つけるのに時間を要したのは、忍耐強い投資家を求めていたからです。目先の利益だけを追って性急に市場に参入したりはしない、という私たちの独自のアプローチを理解してもらう必要がありました。今の時代、多くの人がその過ちを犯しているように思います。現状は、かつてのiPhoneアプリ開発競争のようなゴールドラッシュですから。
だからこそ、私たちはあえて時間をかけることにしたのです。「すぐに見つかったものでビジネスをしようと活用するのではなく、まずは広い可能性を探求しよう（Explore, don't exploit）」。それが私たちの基本的な考えかたです。AIの研究開発は、さまざまな可能性を探る「探求」のサイクルと、有望な技術を応用していく「活用」のサイクルを繰り返します。そして、何か一つがうまく機能し始めると、誰もが後者の「活用」フェーズに殺到するのです。
今の業界は、「活用」モードの真っ只中にいます。少しは落ち着いてきたかもしれませんが、数年前に（OpenAI社の）ChatGPTが登場した頃は、まさしくその状態でした。Sakana AIはそうしたプレッシャーに屈するべきではないと考えています。自分たちの哲学に反しますから。もちろん、いつか皆さんに実際に触れていただけるようなものを世に出せたら素晴らしいとは思いますが、それが具体的に何になるのかについては、まだ深く研究している段階です。
━━LLM（大規模言語モデル）にはまだまだ掘り下げる余地が残されているという考えからでしょうか。それとも、Transformerモデルとは異なる道を模索したいと？
ジョーンズ：社内のプロジェクトには、その両方のタイプがあります。AIの歴史を振り返ると、完全に新しい技術がゼロから現れて、すべてを根底から覆した例は、おそらく一つもありません。いつだって、既存の技術に何かが加わるかたちで発展してきたのです。
