サステナグロースカンパニーアワード2025では13の賞を設定し、さらに審査員特別賞を加え、合計14社が受賞企業に輝いた。前編では7社を紹介する。
人間や自然と調和するものがサステナグロースの本道である
サステナグロースカンパニー大賞
シャボン玉石けん 代表取締役社長 森田隼人

効率や利益を追い求めた合成洗剤か。人間にも自然にも優しい無添加石けんか。シャボン玉石けんは、優しい道を選んだ。
「1974年の決断は売り上げ99%減につながり、黒字化を果たすことができたのは環境意識の高まりを受けて注文が殺到した91年のことです。大変な苦難のなかにあっても『体に悪いとわかった商品を売るわけにはいかない』という信念を貫いてきたこと。今、当時からの想いが社員全員に浸透していること。これこそが、私たちの強みです」
代表取締役社長の森田隼人は、想いこそが強みになると言い切った。今、その想いは、石けんをはじめとする商品を媒介にして社員から顧客へと確実に伝わっている。サステナビリティを重んじる潮流のなかで、自然環境や生態系もステークホルダーとして認識するのが現代的な文脈となっているが、シャボン玉石けんの経営理念「健康な体ときれいな水を守る。」は、その先駆けだ。
崇高なビジョンを見据えて事業承継型のM&Aを実施
M&A/事業承継賞
さくら会 理事長 黒瀬基尋

医療法人さくら会は、愛知県を中心に関東と関西も含めた広域で合計20拠点(歯科医院17拠点、医科3拠点)を運営。歯科から医科への連携で全身疾患の早期発見を促すこの事業モデルは、個人のウェルビーイングを高め、国の医療費を抑制するなど、社会に絶大なポジティブインパクトをもたらす。
「私たちは『質の高い医療を提供し、日本一必要とされる予防医療集団になる』というビジョンを掲げています。この想いを現実のものにするため、『2028年に拠点数5の達成』を直近の目標に据えています」
ビジョンを遂げるためには、サステナグロースを続ける必要がある。理事長の黒瀬基尋が成長戦略の核として据えているのがM&Aだ。
「後継者問題を抱えた医療機関に対して、雇用と医療サービスの継続を最優先に事業承継型のM&Aを行っています。独自の運営ノウハウとDXツールを迅速に導入し、5年で患者数が5倍増といった成果も上げています」
伸長が著しい世界の市場に日本の農産物を届けていく
グローバル賞
日本農業 代表取締役CEO 内藤祥平

まず、「日本農業」という壮大な社名に創業者・内藤祥平の気概が表れている。
「『生産と流通というバリューチェーン全体における低生産性および非効率』が、日本の農業の構造的課題です。私は、日本の農業を『もうかる農業』へと構造転換するべく生産と流通のすべてを改革しています」
例えば、りんごの販売量が1.3万tで、輸出量が4,400t。どちらも日本トップクラスの数字だ。日本農業は創業から9年目の現在、日本のりんごの全輸出量の約15%を占めて、国内最大規模のりんご輸出業者に成長している。
「青森に自社経営の農地(日本最大規模のりんご農園)を有しています。高密植栽培などの先進技術で、一般の農家よりも生産コストを大幅に削減しながら、生産性を3倍に伸ばしました。硬直的で高コストだった流通については、調達・選果・販売を一気通貫で行うことで顧客ニーズへの素早い対応が可能なものへと合理化しています」
寛容な共生社会を目指して意識改革と行動変容を推進
パブリックサービス賞
山形県酒田市 市長 矢口明子

「酒田市は、2017年に『日本一女性が働きやすいまち』を目指すと宣言しました。当市でも人口減少が急速に進んでいるなか、誰もが豊かに安心して暮らせるまちへと仕組みを変えていくことが重要だと考えます」
かつて北前船の西廻り航路の起点として栄えてきた歴史と文化が息づく、港町ならではの開放的な気質があり、新しいものを受け入れる寛容さをもち合わせているのが酒田の風土だと、市長の矢口明子は言う。
「酒田らしい寛容な共生社会を目指しています。『働きやすい職場環境整備』『家庭との両立支援』『女性のチャレンジ支援』を三本柱として、意識改革と行動変容を促す施策を打ってきました。今、女性活躍推進企業の証しである『えるぼし認定』企業数は同規模の自治体で全国1位となりました」
取り組みの結果として、酒田市には新たなIT企業の立地や雇用創出という好循環が生み出され、一筋の晴れ間が差している。
主力事業で培った技術を生かし事業の多角化で売り上げ100億円を達成
100億企業賞
横山興業 代表取締役社長 横山栄介

経営者は、常に問いの前に立たされている。自分は、この新規ビジネスは、どのようにあるべきか―。横山興業の代表取締役社長・横山栄介は、明確な答えをもっている。
「『しなやかに、折れることなく、強くありたい』と考えています。社是の『創意無限・脱皮成長』を常に心がけ、前向きな変化を繰り返し、お客様に満足していただける姿へと進化し続けるために。新しい考え方や技術を常に取り込んでいく。そうすると、現状を打開するアイデアが生まれてきます。これが、創意無限です。そのアイデアをアイデアで終わらせず、現状の殻を破れるほどの強いアクションを実施する。これが、脱皮成長です」
横山興業は、直近9年で主力の自動車部品事業の売り上げを2.9倍の89億円に成長させながら、建材、太陽光、消費者向けブランド「BIRDY.」へと事業を多角化。2023年には、創業72年にして売上高100億円を達成した。
日本の伝統産業に新風を吹き込みサステナグロースへ
100年企業賞
梅乃宿酒造 代表取締役CEO 吉田佳代

国内の日本酒消費量は減少の一途をたどり、廃業する蔵元も多い。1893年創業の梅乃宿酒造は、攻めの姿勢で100年企業の自らをサステナグロースの軌道に乗せた。
「私たちの英断は、保守的な業界のなかで異端とされる果実リキュールの製造に乗り出したことです。2003年に梅酒を発売し、同年に海外輸出事業も開始しています。当時は国内・海外ともに現在のようにリキュール市場が顕在化する前だったこともあり、業界内から批判の声も多く届きました」
2014年に5代目蔵元に就任した吉田佳代は「新しい酒文化を創造する」というパーパスを定めて、バリュー(梅乃宿の価値観・行動指針)のひとつに「進化(失敗を恐れず挑戦し、変わり続けることを楽しむ)」を掲げた。現在、「梅乃宿あらごしシリーズ」に代表される果実感のある日本酒仕込みのリキュールは、日本のみならず世界で評価されている。まさに新しい酒文化の創造だ。
昔ながらの鉄工所から最先端のスマート工場に進化して売り上げ増
DXインパクト賞
テルミック 代表取締役社長執行役員 田中秀範

1990年に愛知県刈谷市で創業したテルミックは現在、自動車関連、航空関連、一般産業用機械関連などで460社以上という幅広い取引先ネットワークを構築。2025年1月期決算では過去最高売り上げを更新し、利益率12.9%(業界平均4%)を記録している。
「私たちは金属部品加工のプロ集団として、最短見積もり、高品質・最適価格、短納期を強みとしながら、少量・多品種など多種多様なご要望にお応えできる体制を築いています。この強みを担保しているのが、約15億円の投資で構築したスマート工場です。基幹システムと自動倉庫を連携させて出荷作業を行うなど、DXを駆使してあらゆる場面で省力化と迅速化を達成しています」
代表取締役社長執行役員の田中秀範が21歳で創業し、旋盤ひとつで仕事をするところから始まったテルミックには今、最先端のDXを見学するために年間で約2,700社以上が来訪。女性が活躍できる環境も充実し、さまざまな好循環が生まれている。
白熱の「サステナグロースカンパニーアワード2025」審査会“持続”かつ“成長”できる会社の条件とは?
「サステナグロースカンパニーアワード2025」受賞企業決定 信念をオンリーワンの価値に変え未来を拓く14社
【後編】新たな価値を創出し持続的成長を描く14社〜サステナグロースカンパニー2025受賞企業発表
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