｢サステナグロースカンパニーアワード2025｣受賞企業決定　信念をオンリーワンの価値に変え未来を拓く14社

8月21日、グランドプリンスホテル新高輪 国際館パミールにて「サステナグロースカンパニーアワード2025」の授賞式が開催された。本アワードは船井総研ホールディングスが主催する企業表彰だ。本稿では「サステナグロースとは何か」を考察する。

1970年の創業以来、業種別コンサルティングによる成長実行支援で実績を積み上げてきた船井総研グループ。今、同グループは「サステナグロースカンパニーをもっと。」というグループパーパスを掲げている。サステナグロースとは、「サステナブル（持続的）」と「グロース（成長）」というふたつの要素をかけ合わせた造語だ。

どのような状況でも企業業績を伸ばし、持続的に向上させていく強さがあること。より広いステークホルダーを思いやる優しさを兼ね備えていること。そうした強さと優しさの両輪で前進していくことがサステナグロースの真髄であると、船井総研グループはとらえている。

サステナグロースカンパニーと称される中堅・中小企業が日本に増えれば、地域や業界が変わり、社会や国家にまでポジティブな影響が波及していく。課題山積の日本でサステナグロースカンパニーの質と量を上げていくことこそ、船井総研グループが敢然と果たすべき役割なのだという。

信念や信頼の根づくところにサステナグロースの道は拓ける

上記のような哲学を根底に据えて開催されたのが「サステナグロースカンパニーアワード2025」である。選考対象は、船井総研グループの取引先および一般からのエントリー企業約1万2,000社。そこから審査基準に照らして50社がノミネートされ、最終審査に進んだファイナリスト企業33社のなかから特に優れた14社の受賞が決定した。

「いかにサステナグロースをデザインするか」が問われている今、各社が有するデザイン力は多様であり、その実績には差異がある。そうした違いを見つめ、また長年にわたって健全なる企業経営を支えてきた船井総研グループならではの精緻な企業診断スコアを加味したうえで「サステナグロースカンパニーアワード2025」の各賞は選定される。

そうして選び抜かれた各賞の名称を一望するだけでも、「サステナグロースカンパニーの特性や役割とは何か」が見えてくる。また、それぞれの受賞理由やトップマネジメントの熱い想いを知ること（受賞企業紹介前編・後編を参照）には、大きな意義があると言える。

今年のサステナグロースカンパニーアワードで審査員を務めた物語コーポレーション（昨年の本アワードで大賞を受賞）の代表取締役社長・加藤央之は、5月に行われた最終審査会後、次の所感を述べている。

「今年の受賞企業のすべてに思想があります。自分たちの信念がオンリーワンの価値に変換され、サステナグロースにつながっていくのだと感じました。表面的な仕組みを整えるだけでは本質的な差別化要素になりえません。大事なのは中身です」

まさに、その思想や信念、本質的な差別化要素が評価され、サステナグロースをデザインする総合力においても高評価を得たのが、大賞を受賞したシャボン玉石けんだ。受賞記念講演の壇上で代表取締役社長の森田隼人は、自社のぶれない思想史を振り返って次のように語った。

「従来の合成洗剤から無添加石けんの製造・販売へとかじを切った74年8月当初は、月商が99%減まで落ち込みました。しかし、『体に悪いとわかった商品を売るわけにはいかない』という強い想いのもと、私たちは今日まで『健康な体ときれいな水を守る。』という企業理念を貫き通してきたのです」

審査員の神戸大学経済経営研究所教授・家森信善は、最終審査後にシャボン玉石けんに対して次の賛辞を贈っている。

「企業が利益を出し続けていくためには、従業員を大切にすること、地域の環境と濃密につながっていることをベースにしなければなりません。ひたすらに自分たちの考える良いことを追求していけば、応援する人々の堅牢な石垣＝信頼が築かれます。石垣なくして、サステナグロースはなしえないでしょう。シャボン玉石けんには、そうした石垣の強さを見ることができました」

例えば、2021年にシャボン玉石けんは福岡県宗像市や九州環境管理協会、山口大学大学院と協力して、宗像市地島で「島まるごと無添加石けん生活」実証実験プロジェクトを実施している。下水処理場から海へ流される水の汚れが減少したことを確認し、「水質改善」と「住民の意識改革」を見事に実証した。1970年代にスタートした挑戦は2020年代に入っても止まることがなく、企業理念を貫くストーリーそのものが競争力となり、あらゆるステークホルダーと良好な関係を築くことが成就しているのだ。

大賞のシャボン玉石けんも1910年創業の100年企業だが、サステナグロースカンパニーアワードには、まさに「100年企業賞」というカテゴリーが用意されている。この賞に輝いたのが、梅乃宿酒造だ。奈良県葛城市で132年の歴史を誇る地酒蔵元の5代目・吉田佳代は、伝統を礎に新しい分野へと果敢に挑戦して業績を伸ばしてきた。

「私たちは、果実をふんだんに使用した日本酒仕込みのリキュールで世界25カ国以上に販路を拡大してきました。これから先、世界市場で『ジャパニーズリキュール』というカテゴリーを確立させていきます」

かつては同業者から批判も受けた。それでも着実に歩み続けてきた自らの道には今、明るい陽光が差している。歴史ある蔵元をけん引してきたCEOの吉田は、表彰式の壇上で晴れやかにほほ笑んでいた。

また、「社会貢献インパクト賞」を受賞したBABY JOBは、月額定額料金を支払うことで、おむつ・おしりふきが直接保育施設に届くサブスク型のサービスを展開。保護者の登園準備と保育士の業務負担＝時間貧困という課題に解決策を提示している。

「少子化先進国の日本がどれだけ子育てを豊かなものにしていけるか―。この課題に向き合い続け、アジアをはじめとする海外展開も含めて世界でイニシアティブをとれる事業者になりたいと考えています」

事業成長＝社会課題解決。代表取締役・上野公嗣は、力強さと優しさを宿した瞳で前を見据えていた。その道は険しくても、見える景色は美しい。歩むほどに、仲間（ステークホルダー）は増える。これぞ、サステナグロースの道を行く醍醐味である。

「サステナグロースカンパニーアワード2025」授賞式前日、東京ミッドタウン八重洲に拠点を置く船井総研グループ東京本社に受賞企業が招かれ、同ビル内のブルガリホテルにて前夜祭のカクテルパーティが催された。

会は酒田市長・矢口明子の乾杯の発声で幕を開け、全国から集った受賞企業トップは、自社の歩みと日本経済の未来について熱く語り合い、互いに懇親を深めた。終盤にはアガサ代表取締役社長・鎌倉千恵美が締めの言葉を述べ、パーティは交流の余韻を残しながら盛会のうちに閉会した。

サステナグロースカンパニーアワードとは
どのような状況でも業績を伸ばし、企業業績を持続的に向上できる強さと、より広いステークホルダーを思いやれる優しさを兼ね備えた会社を、「サステナグロースカンパニー」と定義し、表彰するアワード。船井総合研究所の創業者 故舩井幸雄の遺志を継ぎ、社会に著しい貢献が期待できる法人や組合および経営者の健全な発展を支援し、社会の進展に寄与することを目指している。

各賞の説明
サステナグロースカンパニー大賞
企業業績を持続的に高める強さと、幅広いステークホルダーへの優しさを兼ね備えた「サステナグロースカンパニー」の理念を最も体現する企業を、ファイナリスト企業のなかから1社選出。

M&A／事業承継賞
戦略的M&Aが機能している企業、戦略的な事業承継を行っている企業に贈られる賞。

グローバル賞
日本国内だけでなく海外に事業展開を行い、それが今後の持続的成長に与えるインパクトが大きい企業に贈られる賞。

パブリックサービス賞
公益型の非営利組織（公益社団・財団法人、特定非営利活動法人等）のうち、持続的に社会貢献活動を行えている組織に贈られる賞。

100億企業賞
売り上げ100億円を突破し、今後も持続的成長が見込めると考えられる企業（直近期もしくは前期に売り上げ100億円を突破した企業）に贈られる賞。

100年企業賞
直近期もしくは前期に創業100周年を迎えた企業のうち、SGCにふさわしい実績と今後の成長が見込める企業に贈られる賞。

スモールビジネス賞
規模は大きくなくともキラリと光る、オンリーワンのサステナグロースなポイントをもつ中小企業に贈られる賞。

DXインパクト賞
DXの実践により、売り上げやコスト削減、生産性向上など業績向上に最もインパクトを与えた企業に贈られる賞。

ユニークビジネスモデル賞
独自性のあるビジネスモデルを有し、その優位性が明確であり、それにより持続的成長が見込める企業に贈られる賞。

カスタマーデライト賞
顧客の課題解決を実践し、高い顧客満足と感動を与え、その結果として持続的成長を果たしている企業に贈られる賞。

エンプロイーサクセス賞
従業員が会社および仕事に対する高いエンゲージメントがあり、人的資本経営を推進することによって持続的成長が見込める企業に贈られる賞。

社会貢献インパクト賞
社会全体もしくは地域の課題に対し、自社の商品やサービスでその解決を行うことで、持続的成長を果たしている企業に贈られる賞。

業績アップ賞
著しい成長性と高い収益性・生産性を有し、持続的成長が見込める企業に贈られる賞。

審査員特別賞
持続的な成長を実現し、社会にもより良い影響を与える存在でありながら、各賞の枠には収まらなかった企業に贈られる賞。

サステナグロースカンパニーアワード2025
https://sgca.funaisoken.co.jp