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2025.11.18 08:45

Sakana AI共同創業者ライオン・ジョーンズが語る「LLM革命」、創業秘話、そして日本のAI人材【前編】

「2017年に東京に来て、ここをすっかり気に入ってしまったんです」(ライオン・ジョーンズ、Sakana AI共同創業者兼CTO)

「2017年に東京に来て、ここをすっかり気に入ってしまったんです」(ライオン・ジョーンズ、Sakana AI共同創業者兼CTO)

あの「Transformer論文」の共著者の一人が日本にいる。それも日本でAIスタートアップを立ち上げた━━。それを知った時の驚きと当惑を今も覚えている。中国はもちろん、英ロンドンやカナダ・トロントなど、世界トップレベルのAI人材は各地に点在しながら活躍しているが、シリコンバレーは追随を許さないほどにタレントと資金が集積している。それがなぜ、日本で起業する道を選んだのか?

読者諸賢も仕事やプライベートで使ったことがあるのではないだろうか。ChatGPTやClaude、Google Gemini、Microsoft Copilotといった対話型AIから、PerplexityのようなAI検索エンジン、文章作成ツールのGrammarlyやNotion AI、ソフトウェア開発支援ツールのCursorまで、AIを搭載した製品やサービスが今、世界を席巻している。

その核技術の「LLM(大規模言語モデル)」の基礎理論となったTransformerモデルを提唱した論文「Attention is All You Need」、通称Transformer論文はGoogle ResearchやGoogle Brainの研究者たち8人によって書かれた。その共著者の一人が、Llion Jones(ライオン・ジョーンズ)である。英ウェールズ出身のジョーンズは、英バーミンガム大学で修士号を取得したのち、ソフトウェア会社を経てGoogle傘下のYouTubeで勤務。その後、Google ResearchでAIを研究している。

そしてジョーンズは2023年、CTO(最高技術責任者)としてAIスタートアップ「Sakana AI(サカナAI)」を、Google Researchの元同僚でゴールドマン・サックスでの勤務経験もあるデイビッド・ハ(CEO)、外務省やメルカリで働いていた伊藤 錬(COO)と3人で立ち上げたのだ。同社の動向を追っていたForbes JAPANは2024年11月〜12月にかけて、創業者たちに取材の機会を得て「Forbes JAPAN 2025年3月号」で特集。その後、2025年4月にはForbesの「AI 50」に日本から唯一、選出されている。

ChatGPTが世に出てからまもなく3年。LLMが音楽や映像の世界へも広がり、開発フェーズが「推論」へと移り、OpenAIが2025年8月に最新モデルの「GPT-5」を発表した今、この技術革新の源流を振り返る意味があるのではないか。すべての始まりとなった論文の発表からSakana AIを起業するまでに、どのような背景があったのか。2024年12月上旬に行われた、Attention is All You Need論文の共著者で、Sakana AI共同創業者兼CTOであるライオン・ジョーンズとのインタビューを前・後編に分けて公開したい。

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文 = 井関庸介 写真 = 能仁広之

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