カーテン越しの秋の光が、ルビーやダイヤモンドのブレスレットを照らしていた。東京都庭園美術館で開催中の「永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル — ハイジュエリーが語るアール・デコ」。100年前のパリ万博を制したジュエリーが、東京にある92年前のアール・デコ建築に展示されている。
なぜいま、ラグジュアリーメゾンが「体験」に投資するのか。その一つの答えを、白金台の旧朝香宮邸で知った。
1925年、パリ。「現代装飾美術・産業美術国際博覧会」、通称アール・デコ博覧会が開催された。第一次世界大戦後の復興を象徴するこの万博で、ヴァン クリーフ&アーペルは宝飾部門にブレスレットやブローチなど複数の作品を出品し、グランプリを受賞した。
評価されたのは、幾何学的なモチーフと自然の融合、花を抽象化したデザイン。機械文明への憧れと自然への回帰が同居した、熱狂的な時代の美意識を体現していた。
それから100年。
当時のジュエリーたちが、東京の旧朝香宮邸で、宝物庫から解放されて伸びをしているような、生き生きとした表情を見せている。100年という時間は、流行を様式に変え、商品を文化財に変える。
アール・デコ建築という舞台装置
この展覧会が選んだのは、白金台の東京都庭園美術館。ここは1933年に完成した旧朝香宮邸、つまり皇族だった朝香宮鳩彦王と允子妃の私邸として建てられた建物だ。
夫妻は1920年代にパリに滞在し、アール・デコの洗礼を受けた。帰国後、その記憶を形にしたのがこの邸宅で、それ自体がアール・デコの結晶体となっている。
「この建物と作品は、同じ時代を生きた仲間のようなものです」
記者会見で、東京都庭園美術館の牟田行秀副館長はそう語った。実際、ルネ・ラリックのガラスレリーフやアンリ・ラパンの壁画といった邸宅の装飾と、展示されるジュエリーは同じ1920-30年代のパリで生まれたものだ。
一部屋ごとに異なるランプが下がり、壁とドアの木枠の間にはロープが仕込まれている(遠目にはわからない縁取りだが、近づけば職人の手仕事が見える)といった、手の込んだしつらえには奥深い手仕事の魅力がある。
たとえば1階の小客室。アンリ・ラパンが描いた森の壁画には、木々が連なり、その間を水のような銀色の光が流れている。その絵の前に展示された木の葉をモチーフにしたヴァン クリーフ&アーペルのブローチが、まるで絵から飛び出してきたかのように、同じ光を受けて輝いている。絵画とジュエリーが90年の時を超えて響き合う瞬間だ。



